セリエAではなかったが…
そして、冨安が評価を落とした最も大きな原因に挙げられるのは、ボールロストの多さである。データサイト『Sofa Score』によるその回数は19回。これはペペの22回に次いで先発11人中ワースト2位となる数字になっている。
チーム全体としてビルドアップ時に迷いが生じていたが、もちろん冨安にも同じことが言えた。ボールを持ってから人を探すので、詰まった状態でパスを出す場面が散見。技術力ではなく、判断力に問題があったと言えそうだ。
71分には自陣深くでボールを持った冨安が判断に迷ってしまい、エドゥアールにボールを奪われる。そして最後はコナー・ギャラガーにシュートを放たれてしまった。結果的に失点は免れたが、非常に危ない場面だった。
直接的な原因になったわけではないが、冨安は1失点目のシーンもパスの出しどころで迷っており、詰まったことで横にいたパルティにボールを預けている。その彼が不用意な失い方をしたことで、結果的にベンテケにゴールを献上することになった。
冨安が務めるサイドバックというポジションはただでさえパスコースが限定される。その状況の中、先述した通りチームとして組み立てがうまくいっておらず、味方のサポートが十分ではなかったのも事実なので、日本代表DFにとって難易度の高いゲームだったことは確かだ。
しかし、それでもうまくプレーする必要がある。ボローニャ在籍時は多少プレーに迷いが生じても、そこで奪われ大ピンチを招くことは少なかった。それが強度もプレースピードも世界最高峰のプレミアリーグでは致命的となってしまう。詰まった時に逃げるのか勝負するのか。その的確な判断がセリエA時代よりも素早く求められる。この試合で冨安に突き付けられた課題と言えるだろう。
(文:小澤祐作)
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