本田圭佑は今年9月にリトアニアのクラブ・スドヴァに流れ着いた。バスケットボールの強国として知られているが、サッカーの実力を知る日本人は少ないはずだ。10月18日に初の著書『フットボーラー独学術』を上梓し、隣国ラトビアでプレー経験のある柴村直弥氏が、リトアニアのレベル、本田圭佑の獲得理由などを前後編で解説する。今回は前編。(文:柴村直弥)
本田獲得に至ったリトアニア特有のレギュレーション
リトアニアはバルト三国の中では最も南に位置していますが、緯度は高く、冬は雪がかなり積もる寒い国です。筆者が最初にリトアニアに降り立った2011年1月中旬も連日雪が降っていました。リトアニアには人工芝の屋内練習場があったため、当時筆者が練習参加していたラトビアのFKヴェンツピルスが1週間のキャンプを行なっていたところでした。
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その後、バルト三国の上位クラブが戦う「バルティックリーグ」(2011年を最後に終了)で、リトアニアのFCシャウリャイとホーム&アウェーで対戦しました。5月にリトアニアで試合をしましたが、5月でも雪の影響でピッチは柔らかく、ぬかるんでいました。
当時の相手チームの印象は、体格の良い選手が多く、身体をぶつけると圧力を感じ、いわゆるフィジカルが強い、というものでした。
リトアニアリーグ自体のレベルは欧州内では高いものとは言えず、リトアニアのクラブはUEFAチャンピオンズリーグやUEFAヨーロッパリーグのグループリーグに出場したことはまだありません。ちなみに同じバルト三国の隣国ラトビアは、FKヴェンツピルスが2009-2010シーズンにUEFAヨーロッパリーグのグループリーグに出場し、ドイツのヘルタ・ベルリンやポルトガルのスポルティングなどとアウェーで引き分けたりもしています。ただ、リトアニアのスドゥヴァやジャルギリスはバルト三国でも上位のレベルで、欧州でもそれなりに通用するクラブと言えます。
そのスドゥヴァが本田圭佑選手を獲得した理由の一つに、リトアニアリーグは同じチームと4回対戦するという点もあるかもしれません。
日本のJ2も2007年までは4回対戦形式でした。筆者もアビスパ福岡時代に経験し、2011年のラトビアリーグでも同じように4回対戦を経験しました。当然、対戦を重ねるごとにお互いのチームのことがわかっていきます。
自分たちのチームと対戦した時にどのような感じの試合になるのか、お互いの強みや弱みがどのように作用するのかなど、選手たちの特徴や噛み合わせの相性も含めてわかってくる中で、チームとしての戦術や戦力の積み上げが重要になっていくのです。
(文:柴村直弥)
『フットボーラー独学術 生きる力を自ら養う技法』
≪書籍概要≫
定価:1870円(本体1700円+税)
発売:2021年10月18日
著者:柴村直弥
著者の柴村直弥は小学生の頃から自ら学ぶことを習慣化し、プロサッカー選手への道を切り開いていった。
選手としてそこまで特徴があったわけではなかったにもかかわらず、UEFAヨーロッパリーグ、AFCアジアチャンピオンズリーグ出場を果たせたのは、語学などサッカースキル以外の「学ぶ技法を学ぶ術」を持っていたからだ。
本書ではサッカー業界の様々な仕組み、流れを紹介しながら、サッカー選手として、そして引退後、社会で生きていくための技法を公開する。
【了】