固定メンバーだけで最終予選は勝てない
選手ファーストの指揮官は彼らの声に耳を傾け、修羅場をくぐり抜けるためにようやく重い腰を上げた。東京五輪代表の田中碧という「1チーム・2カテゴリー」の象徴的選手を先発起用したのも強い決意の表れだったのかもしれない。その田中碧が値千金の1点目を奪い取ったのは、彼自身にとっても大きな自信になったはずだ。
後半の古橋、浅野、中山らの投入も同様だ。大迫にアクシデントがなければ古橋を最前線に起用していたか未知数な部分もあるが、とにかく新しい形にトライしたのは確か。その中から浅野が活路を開いたのも、チームの弾みになったと言っていい。
「チームとしては、4-2-3-1と今日の4-3-3の新しいオプションができた。そこはポジティブだと思う」と遠藤も前向きに話していたが、フォーメーションと人材の両面で幅が出てきたのは、残り6試合を乗り切るうえで大きな強みになる。厳しい戦いの続く最終予選はやはり固定システム・固定メンバーだけでは勝てない。その重要性を森保監督自身も再認識したのではないか。
大一番の後、オマーンがベトナムを3-1で下し、サウジアラビアも中国相手に3-2で競り勝っている。これにより、日本は再び4位となった。「何とか首の皮一枚つながっている状況」と吉田も厳しい表情を見せている。
ここから1つでも取りこぼせば、オーストラリア戦勝利の価値はなくなる。森保監督自身が国歌斉唱や試合後の場内を一周して挨拶した際に浮かべた涙も無意味なものになり、今度こそ解任も免れないだろう。そういう事態だけは絶対に避けないといけない。ここで取り戻した積極性と大胆さを11月以降も持ち続け、柔軟なチームマネジメントを見せてほしい。
(取材・文:元川悦子)
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