巻き返しへの期待。懸念すべきは…
田中がコントロールする攻撃はSBを高い位置へ上げて幅と厚みを作っていたが、より決定機に直結したのは高い位置でのボール奪取とカウンターアタックだった。
79分の遠藤からのパスで古橋が抜け出しかけた場面、オーストラリア代表のオウンゴールにつながった86分の吉田麻也のパスからの浅野の突破とシュートは、形としてはいずれもシンプルな縦パスによるアプローチである。前方にクリエイティブなパサーのいない構成上、FWの個人技とワンアクションで裏へ入り込むスピードが重要になる。これもある意味、リバプール方式といえるかもしれない。
ミドルプレスによる中盤でのボール奪取と、相手が引き切る前の強度の高い縦への仕掛けは相性がいい。ロベルト・フィルミーノ型のCF大迫もアクセントになるが、伊東、古橋、浅野といった速いFWは必須になりそうだ。
オーストラリア代表を下した第三形態もいくつかの粗はある。とはいえ、重要な一戦での勝利は今後の巻き返しを期待させる。これまでの第一形態、第二形態がそうだったように、初速がすべてで進化はしない懸念はあるが、難所を乗り越えたことでまずはひと息つけた。
(文:西部謙司)
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