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選手の自主性任せな日本代表のサッカーは限界? 修正力が欠如、それでも森保一監督解任は得策ではなく…【W杯アジア最終予選】

text by 編集部 photo by Getty Images

森保一
【写真:Getty Images】



 現地7日にカタールワールドカップのアジア最終予選が行われ、日本代表はサウジアラビア代表に0-1で敗れた。

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 嫌な負け方だった。サウジアラビア代表にボールを支配される展開は試合前から予想されていたが、実際にそうなったときに流れを劇的に改善させられるような効果的な打開策を見出せず。そして同じようなミスを繰り返していた末、終盤に決定的なパスミスからこの試合唯一のゴールを奪われた。

「ブロックを敷いたなか、ワンチャンスにカウンターで前に行くタイミングそんなに悪くなかったと思うんですけど、それが無理だった時にどう落ち着かせる時間帯を作れるかはチームとして大事なのかなと思います。

今日はかなり中盤の守備で運動量が多かった分、攻撃になった時に自分のところで落ち着かせられなかったという反省はあります。そこでカウンターに行くところと、一度(ボールを)落ち着かせて、みんなで息を合わせてタイミングを図りながら相手を崩していくみたいな、そこの使い分けをもっとチームとしてやっていけるのかなと思います。

攻め急ぐじゃないですけど、ボールを奪った後にシンプルに縦に(パスを)つけても、そこからやっぱりサコ君(大迫勇也)が孤立しているところがあったので、そこで相手に(ボールを)奪われることが結構多かった。そこで縦につけるだけじゃなくて、もっと横に動かしたかったのはありますね」

 中盤で攻守に奮闘したMF遠藤航は試合の流れを振り返りながら、具体的な改善策を見出していた。しかし、実際にチームとして意思統一しながら実行に移すことはできなかった。なので「反省」として語られているのである。

 センターバックのDF吉田麻也も「相手の情報のインプットは非常にうまくできていたと思います。準備のところでも相手のストロングポイントを、守備に関しては把握できていたし、個のところでもうまく抑えられたと思います」と述べつつ、ゴールを奪う過程における課題を認識していた。

「後ろから見ていて、攻撃に怖さが足りないのは感じていましたけれども、FWのせいだけではない。改善点としては、もうちょっとボールを保持して、相手を走らせて、相手のオーガナイズが崩れるタイミングを見定めるのも大事だし、遅攻と速攻をうまく使い分けたかったなと思います」

 攻撃に緩急をつけられないのは日本サッカーが抱える積年の課題だが、現在の日本代表では試合中の修正力欠如も目立つ。誰かが相手の出方に対して有効な動きを見つけて実行しても、その意図が全体に共有されるまで時間がかかり、組織的に連動しきれないまま攻守のバランスが中途半端になって隙を見せてしまうのだ。

 選手の自主性が尊重されてきたチームではある。しかし、個人がもともと用意していたゲームプランから逸脱した動きをするとなると、そこにはメリットもあれば、同時にバランスが崩れることによるデメリットやリスクも発生する。

 森保一監督はあくまでピッチ上の選手たちの自主的な改善を信頼しているが、試合中のプラン修正において重要なのはベンチからの働きかけだ。個々が修正を図ろうとしているとき、全体を俯瞰して他の選手たちに適切な立ち位置や動き方を伝え、全体の規律やバランスを整えなければならない。

 例えばゴールを奪うために前がかりになりそうなときは、一方で発生するリスクを管理できるような方策も持っておかなければならない。チームとはいえサッカー観や戦術的素養の異なる選手たちをまとめ、全体の意思統一を図るには、ピッチの外からの適切な助言が欠かせない。

 現状では選手たちの自主性が尊重され、試合中の戦術変更などで大きな裁量を与えられている反面、ベンチからの介入が少なすぎるように見える。監督主導でのポジショニングの調整やシステム変更、選手交代による意思表示は、チームが組織として最大限のポテンシャルを発揮するために不可欠なものだ。

 ベンチ主導の発信で戦い方を変えるだけでなく、選手たちが見つけた打開策に対し「そうするなら、周りはこう動けばさらによくなるよ」という助言も重要で、ピッチの中と外で協力して試合中にトライ&エラーを迅速に回しながら勝ち筋を見つけていくべきだろう。

 ただ、結果が出ていないからといって、いますぐ森保監督を解任するのは得策ではない。現体制で戦うよりも、ワールドカップ本大会まで約1年で、全く考え方の違う新監督を連れてくるリスクの方がはるかに大きい。監督交代によってチーム力が劇的に上向くとは限らない。

 ならば人材の投入によるサポートを考えてはどうだろうか。例えば試合中の戦術変更の見極めに長けたコーチを登用するであったり、ピッチ上の現象を迅速に解釈してリアルタイムに現場へ伝達できる分析・スカウティングのスペシャリストを迎えるであったり、考えられる選択肢は様々ある。

 やはり限られた視野の中で膨大な数の判断を下さなければならない選手の力だけで都度修正していくのには限界がある。チームとしての中長期的な積み上げも成果として残りづらくなる。

 だからこそ現体制のチームを外から見ていて、新たな視点を提供できる人材の力を借りることのメリットは大きい。日本人、外国人問わず森保監督のチームコンセプトへの理解がある優秀な能力の持ち主を探し、日本代表のスタッフに加える。そして、森保監督自身もベンチからの有効な介入を増やす。これがワールドカップ予選逆転突破と本大会でのベスト8進出を果たすための処方箋だ。

(取材・文:舩木渉)

【了】

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