長友佑都は何をもたらすのか?
逆に言えば、川崎は絶対に「一瞬の隙」を作らないし、相手のミスを逃さない。それは神戸戦でも見られた点。後半に入って神戸が献上した2度のPKのうち1つを確実に仕留め、さらにオウンゴールを誘発した場面も素早いボール奪取が発端だった。ボールを止める、蹴るの正確さや高い強度はもちろんのこと、全員が攻守の素早い切り替えを徹底し、90分間通して気を抜くことなくやるべきことをやっているからこそ、川崎は強いのだ。
「世界で僕が感じてきた世界基準のフットボールだったり、メンタリティ、世界基準の準備をする力は後輩たちに伝えられる」と長友は古巣復帰した際、語気を強めていた。まずは川崎の領域に達しなければ、世界基準には届かない。それは日本代表にしても同様だろう。厳しい現実を再認識するいい機会になったのではないだろうか。
1点のビハインドを追いかけるFC東京は、後半に永井謙佑を投入してギアを上げた。永井が最前線に陣取り、ディエゴ・オリヴェイラとアダイウトンが両サイドに入ったことで、外に起点が生まれ、推進力は一気に増した。後半29分に中村拓海のロングパスがフリーの永井に通った場面など、同点弾が生まれてもおかしくない場面はあった。
しかしながら、そこでも川崎はジェジエウが猛然と走って帰陣し、泥臭く体を投げ出してゴールを阻止する。長友ら欧州復帰組が口を酸っぱくして言い続ける「ボールへの執着心」を体現したかのようなプレーだった。
そういった闘争心や勝利への渇望を示したのは、ジェジエウだけではなかった。後半途中から出てきた谷口彰悟や小林悠らベテランも高い守備意識を前面に押し出し、FC東京のチャンスをことごとくつぶしていた。結局、試合は1-0のままタイムアップの笛。シュート数こそFC東京が12対6と上回ったものの、軍配は川崎に上がった。