悲劇のハンドは正しかったのか?
後半アディショナルタイム、ピエール・カルルの手にボールが当たったとして、アトレティコにPKが与えられる。当然ミランの選手は猛抗議したが、判定が覆ることはなく、ルイス・スアレスがこれを沈め1-2でスコアが逆転した。
サンドロ・トナーリが試合後に話した通り、上記のシーンをスローで見てみると、先に手でボールに触れていたのはカルルではなく、マッチアップしていた
レマルだった。では、なぜ後者のハンドが取られたのか。
まず、手や腕にボールが触れることのすべてが反則になるわけではないということを理解しなければならない。手や腕をボールの方向に動かして意図的にボールに触れたり、不自然に身体を大きくしたと判断された場合、反則となる。
先に手でボールに触れたレマルは不自然に身体を大きく見せたわけではないが、手でボールを押しているようには見える。しかし、チャキル主審もVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)側もこれが意図的ではないと判断したようだ(そもそもレマルが先に触れていたか理解していたかが怪しいが…)。
では、カルルの場合はどうか。レマルの手により押し出されたボールは確かに手に当たっているが、ボール方向に動かしてはおらず、意図的でないことは確か。身体を不自然に大きくしたとも言い難い。
しかし、手や腕の位置が競技者の身体の動きから正当なものかどうかの判断は、最終的には審判に委ねられる。よって、チェキル主審にはカルルが不自然に身体を大きくしたように見え、VAR側もOFR(オンフィールドレビュー)を提案しなかったと言うことになる。
終わったことをどうこう言っても仕方ないが、カルルよりも先にボールに触れたレマルの手の動が意図的ではなかったかと言われると微妙なところ。チェキル主審の判断が正しかったとは言い難い。
その他の場面でもミランは判定に泣かされた。ケシエはM・ジョレンテの足を踏みカードを受けたが、トナーリがデ・パウルに足を踏まれた際にはカードはおろかファウルすらなく、判定にやや偏りがあったと言わざるを得なかった。
前半29分まで、ミランは圧倒的に強かった。それが最終的に一つの退場と疑問符のつく判定でこのような結果に終わったのはなんとも悔やまれる。肉体的にも精神的にも大きなダメージを負うことになったが、次のアタランタ戦でチームは立ち直ることができるだろうか。
(文:小澤祐作)
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