やっぱりすごい背番号10
そんなレバンテ戦は、冒頭でも記した通りバルセロナを愛する人にとって忘れられぬものとなった。それは、ただの3-0勝利ではなかったからだ。
78分ごろ、カンプ・ノウは突如として大歓声に包まれた。その理由は、ベンチから背番号10を身に着けたアンス・ファティが姿を見せたからだ。そして同選手は81分にピッチへ。スタジアムはさらに大きな拍手に包まれた。
神童ファティは昨年11月に左ひざの半月板を断裂する重傷を負い、手術へ。当初は4ヶ月ほどで復帰する予定だったが、なかなか回復には至らず、手術とリハビリを繰り返した末、約11ヶ月ぶりに実戦復帰を果たすことになった。
ファティがピッチに立った81分時点でスコアは2-0。内容的にもバルセロナの勝利はほぼ確実だったため、背番号10にはボールに触れ、感触を少しでも取り戻してもらうだけでいいと思った人は少なくなかったはずだ。
しかし、リオネル・メッシ去りし後の10番はさすがだった。怪我明けとは思えぬほどのキレでレバンテ守備陣を脅かし、感触を取り戻すどころか、チームの攻撃を瞬く間に活性化させたのである。レバンテはファーストシュートに81分を費やしたが、ファティは出場からわずか3分でシュートに持ち込んでいる。
そして91分、歓喜の瞬間は訪れた。E・ガルシアのパスをデパイがフリックすると、中央でファティが粘りゴール前へ侵入。最後はペナルティーエリア外から右足を素早く振り抜き、GKのタイミングをずらしゴールネットを揺らした。
ファティの出場時間はアディショナルタイム含め約13分だったが、シュート数2本、キーパス1本、ドリブル成功数1回、そして1得点と申し分ない数字をマーク。わずかな時間で一気に主役の座に君臨した。この男、やはり只者ではない。
バルセロナにとって厳しい戦いはこれからだ。今なお怪我人が多い中、29日にはアウェイでのCLベンフィカ戦が控えており、それが終わり帰国すれば、今度はリーグ戦で昨季王者のアトレティコ・マドリードと対戦しなければならない。しかも、アウェイだ。
そんなバルセロナに希望を与えられる存在こそアンス・ファティであるということは、このレバンテ戦で大きく証明された。メッシの後継者が伝説を残すため、ここから再び歩み始める。
(文:小澤祐作)
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