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セリエA 3年前

ユベントスはミランにも…。60年ぶり異常事態を抜け出すには? 脱ロナウドに大苦戦で迫られる方針転換【分析コラム】

シリーズ:分析コラム text by 舩木渉 photo by Getty Images

もっと守備的に戦うべき?

マッシミリアーノ・アッレグリ
【写真:Getty Images】



 この試合の交代カードはいずれも攻撃的な選手に使った。つまりユベントスとしては終盤に追加点を奪うことが狙いの1つだったのだろう。だが、後半の早い段階から流れはミランに傾いていて、アッレグリ監督が交代策に込めたメッセージは結果につながらなかった。

「残念ながら、我々は集中力や決断力を失っていた。失点したコーナーキックの場面を見ればわかる。我々には自己満足があった。試合を支配したなら、手綱を放してはいけない。明らかにもっと進歩する必要がある」

 試合の主導権を握り続けるために必要だったことが、1点差を維持するための守備面の強化だとしたら少々悲しい。だが、絶対的な得点源を失ったユベントスにとっては、これが現実だ。セリエAではもう追われる立場でなく、追う立場になった。

 ミランのように逆転を目指して勢いを増して攻めてくる相手には、1点差を守りきらなければならない。追加点を目指すのは、1点を死守した先にある目標だ。アッレグリ監督が認めた自身の交代策の誤りを見直して1点を守りきるなら、もっと守備的な選手を送り出すべきだったのだろう。

 前線のアタッカーをフレッシュな選手に入れ替えるのは定石として、他の選択肢は見直しの余地がある。ミラン戦でいえばクアドラードを下げるタイミングでDFマタイス・デ・リフトやDFダニエレ・ルガーニを投入し、3バックにシフトする戦い方は交代カードによるメッセージとして非常にわかりやすい。

 右サイドバックのDFダニーロをセンターバックに回し、MFフェデリコ・ベルナルデスキやDFマッティア・デ・シーリオの起用でシステムを変更する形も考えられる。中盤に運動量があって対人勝負にも強いタイプの選手を入れるのもありだろう。

 とにかく、これまでのように攻撃的な選手を次々に投入して圧力を強めるやり方では勝てなくなってきている。ロナウドという絶対的エースの得点力がそっくりそのまま失われた状況では、どんな状況でも手堅く勝ちながらチーム戦術の練度を上げ、攻撃力の減退を守備力の強化で補う方向に組織を強化していく他ない。単に自陣に引きこもって守りに専念するのではなく、攻撃性を維持しつつ守備の確実性を上げていくべきだ。

 ユベントスは現状4試合で2分2敗、4得点6失点、勝ち点2で20チーム中18位に沈んでいる。このままではシーズンで40得点50失点くらいの、セリエAでも平凡な中堅クラブのような成績になってしまう。だが、まだ壊れかけの状態で、十分に修復できる時間がある。

 再び頂点に立って威厳を取り戻すには、元王者としての驕りを捨て、挑戦者として大胆な発想の転換が必要だ。

(文:舩木渉)

【了】

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