イングランドが盛り上がっている理由
その意味で、ジェフユナイテッド千葉レディースがアレックス・チディアックとクインリー・クエザダを、ちふれASエルフェン狭山がサリナ・ボールデンを、INAC神戸レオネッサがロスナニ・アズマンをそれぞれ獲得したのはポジティブな兆候だ。こういった選手たちが好印象を与えられたとすれば、他のクラブも後に続き、スカウト網を広げようとするのがごく自然な流れだろう。
オリンピックを通じて、世界トップレベルの女子選手たちが日本のファンの目に触れることとなった。それを考えれば、WEリーグの各クラブがそのチャンスを生かして獲得への触手を伸ばし、日本へ連れてこようとしなかったのは少しばかり残念なことだ。
五輪を戦った大物選手はWEリーグのクラブにとって金銭的に手が出ない存在ではあるし、新型コロナウイルスによる入国制限が海外からの選手補強をより困難にしている。そういった事情はあるとしても、絶好のチャンスを逃してしまったように感じられてしまう。
イングランドで盛り上がっている女子スーパーリーグ(WSL)の例でも、辛抱強さや露出度の増加、経済面のバックアップなどが成功に向けた重要な要素であることが示されている。
WSLは2011年にセミプロとなり、現在は完全なプロリーグとして4年目を迎えている。近年の成長の結果としてメディアでの露出も大幅に増え、なでしこジャパンのスター選手である岩渕真奈がアーセナルに、長谷川唯がウェスト・ハム・ユナイテッドに加入したように世界中からトップレベルの選手たちが集まり、今季からは年間推定800万ポンド(約12億円)での放送契約も締結されている。
もちろんWEリーグがその繁栄の域に達するまでには、乗り越えていくべき障害も多い。だが自信を持って第一歩を踏み出すことができれば、国内サッカーの未来も代表チームの未来も明るいものとなっていきそうだ。
(文:ショーン・キャロル)
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