2021/22シーズンのプレミアリーグが開幕し、夏の移籍市場が終了した。この夏も各チームで様々な移籍があったが、プレミアリーグの強豪はそれぞれどんな動きを見せたのだろうか。今回はトーマス・トゥヘル監督の下で急成長し、昨季UEFAチャンピオンズリーグ(CL)のタイトルを獲得したチェルシーの補強動向を読み解く。(文:安洋一郎)
ルカク復帰で穴は埋まった
【写真:Getty Images】
昨夏、チェルシーは補強禁止処分が解除されたこともあり、カイ・ハフェルツやティモ・ヴェルナーらを総額2億2000万ポンド(約334億円)の移籍金で獲得。しかし、成績は伸び悩み前任のフランク・ランパード監督は21年1月に解任された。
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1月末に後任としてトーマス・トゥヘルが監督に就任すると、課題だった守備が大幅に改善された。チームは一気にUEFAチャンピオンズリーグ(CL)出場権内の順位まで浮上し、プレミアリーグを4位でフィニッシュ。CL決勝ではマンチェスター・シティを1-0で下し、2011/12シーズン以来の欧州チャンピオンのタイトルを獲得した。
トゥヘル就任以降、短期間で完成度の高いチームへと進化を遂げたチェルシーだが、明確な課題があった。それは「絶対的なストライカーの不在」だ。昨夏、新エース候補としてドイツ代表FWティモ・ヴェルナーがチームに加わったが、決定力不足に悩み、プレミアリーグでは6ゴールに留まった。オリビエ・ジルー、タミー・エイブラハムもトゥヘルの信頼を掴めず、昨季のプレミアリーグのチーム内得点王は全7ゴールをPKで決めたジョルジーニョとなった。
そこで今夏、ドルトムントのアーリング・ハーランドをはじめ、多くのストライカーが獲得候補に挙がった中、最終的に獲得したのは7年ぶりの古巣復帰となるロメル・ルカクであった。エバートンやマンチェスター・ユナイテッド、インテルで大きく成長して、幼少期から大ファンだったクラブへと帰還した。復帰後初先発となった第2節アーセナル戦では、対峙したパブロ・マリをフィジカルで圧倒し、チェルシーでの嬉しい初ゴールも記録した。
今夏の大型補強はルカクのみと思われたチェルシーだったが、17/18シーズン以来のプレミアリーグ優勝を目指す欧州チャンピオンの補強はこれだけでは終わらなかった。移籍市場最終日、もう間もなく市場が閉じるというギリギリのタイミングでアトレティコ・マドリードからサウール・ニゲスを買い取りオプション付きのローン移籍で獲得したと発表した。かつてほどアトレティコ・マドリードで絶対的な存在にはなってはいなかったが、その実績と実力は本物だ。26歳にしてラ・リーガで264試合、CLで59試合に出場している選手はそうそう居ない。チェルシーには同じポジションにカンテ、ジョルジーニョ、コバチッチと実力者が揃っているが、スタメン争いに割り込めるかどうか注目だ。
ルカク、サウールと実力者2人がチェルシーに加入した一方で、タミー・エイブラハム、オリビエ・ジルー、クル・ズマらランパード前体制で主力としてプレーしていた選手がチームを去った。特にエイブラハムは8歳からチェルシーの下部組織で育った選手だが、現体制ではベンチ外が続くなど構想外に近く、ルカクと入れ替わる形でイタリアへ活躍の場を移すことになった。
ズマ退団に伴い、セビージャからフランス代表DFジュール・クンデの獲得が濃厚視されたが、結果的に移籍金が折り合わず、今夏の獲得とはならなかった。また、ロス・バークリーやルベン・ロフタス=チークら一部の余剰戦力の売却にも失敗している。