秋のフォーメーション集中講座と題し、フォーメーション観をアップデートし、その攻防をよりロジカルに堪能することを試みた発売中の『フットボール批評issue33』から、改めて可変式全盛時代の基礎を学ぶらいかーると氏の「フォーメーション亜種虎の巻」を一部抜粋して前後編で公開する。今回は後編。(文:らいかーると)
インサイドハーフがなくなった
中央レーンに位置する選手の役割は内側レーンに位置する選手とほとんど差がない。選手の個性によって役割は変わるが、過去のCFのようなプレーをする選手は減ってきている。内側レーンに位置する選手たちとレーンをシェアしながら段差を作り、相手の守備の基準点を一定にしないように振る舞っていることが多い。
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CFには重さが必要という格言があったが、今の時代はCFがいないけれど、内側レーンの選手が裏に飛び出せば問題ない時代になっている。よって、CFに必要とされる高さや重さのある選手がいなくても採用できる策ということが言える。
5トップを4バックで抑え切ることは困難な作業となる(図)。4バックのスライドで対応しようとすると、逆サイドのWGにどうしても時間を与えることになってしまう。サイドチェンジからのアイソレーションは多くのチームを苦しめてきた。
SHを下げて対応するチームが増えていたが、最初から5バックで守備の基準点をはっきりさせることのほうが得策と考えるチームが増えていき、サイドチェンジからのアイソレーションはゆっくりと姿を消していった。サイドチェンジをしても相手が側にいるからである。
[3-2-5]の次の特徴は従来のIHがなくなったことだろう。内側レーンにいる選手は2シャドーと呼ばれることが多い。実際に2シャドーの選手の仕事は相手の守備ブロック内にいることが多い。IHの仕事をこなしている選手は[3-2-5]の[2]の選手が中心となっている。彼らがボールを[3]から受け[5]に繋ぎ、相手のカウンターを止めることまで行っている。本来のIHの役割から解放されたことで、2シャドーの選手はレーンを横断しながら、ゴール前の仕事に集中できるようになってきている。
前線の5枚が全員でレーンをシェアする時代は迫ってきているが、すべてのレーンの役割をできる選手を揃えることは現実的とは言えない。ビッグクラブだけに許された戦術と言えるかもしれない。
(文:らいかーると)
秋のフォーメーション集中講座! 『フットボール批評issue33』は9月6日発売。フォーメーション観をアップデートし、その攻防をよりロジカルに堪能することを試みた最新号
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『フットボール批評issue33』
≪書籍概要≫
定価:1650円(本体1500円+税)
秋のフォーメーション集中講座
今さら「フォーメーション」だけに特化したサッカー雑誌が、しかも東洋の島国から出るとの報せを、もし、イングランドのマンチェスター界隈、それもペップ・グアルディオラ、フアンマ・リージョが奇跡的に傍受したとしたら―。「フォーメーションは電話番号に過ぎない」と切って捨てる両巨頭に、「まだ日本ではそんなことを……」と一笑に付されるのだろう。いや、舌打ちすらしてくれない可能性が高い。
しかし、同誌はそんなことではめげない。先月無事に開催された東京オリンピック2020におけるなでしこジャパン戦のような感情論一辺倒の応援に似た解説だけでは、フットボールの深淵には永遠に辿り着くことはないと信じて疑わないからだ。「フォーメーション」と「フォーメーション以外」を対立させたいわけでは毛頭なく、フォーメーション観をアップデートし、その攻防をよりロジカルに堪能したい、ただそれだけなのである。
【了】