ジャカが退場に追い込まれた理由
先述した通り、アーセナルは後半の45分間ずっとシティにボールを握られている。もはや攻めの姿勢は皆無で、これ以上失点を増やすまいと全員が自陣へ引かざるを得なくなってしまった。
こうなってしまったのは、やはり前半45分間の出来が大きく響いている。早々に2点を失ってダメージを追い、その傷口がジャカの一発退場によりさらに広がってしまった。
結果としてこの試合に大きな影響を及ぼしたジャカの退場だが、一体なぜ起こってしまったのか。選手本人はもちろん、アルテタ監督にも責任がなかったとは言い切れない。
冒頭でも紹介した通り、アーセナルはこの日5-4-1で試合に臨んでいる。中盤は右からブカヨ・サカ、マルティン・ウーデゴール、ジャカ、そしてエミル・スミス・ロウという並びだった。
ただ、フォーメーション図でこそ中盤底ウーデゴールとジャカは横並びだったが、基本的に試合の中では守備時に前者がアンカーのロドリへマークに行くため、実質ジャカのワンアンカーという形になっていた。まさにこれこそが問題だった。
もちろんシティはロドリにマークをつけられたとしても、最終ラインからその脇へ平然とパスを通してくる。そして両サイドハーフが戻り切れないと、ジャカが一人で中央のスペースを埋めなければならなかったのである。このスイス代表MFは、いわゆるエンゴロ・カンテのようなボールハンターではない。完全に仕事量はオーバーしていた。
退場シーンを見ても、ウーデゴールがやや前にいてジャカのワンアンカーという形は出来上がっている。そしてセドリック・ソアレスとカラム・チェンバースがやや前に出たことでジョアン・カンセロが完全フリーになり、ジャカが懸命にカバー(カバーできるのがジャカのみの状況)。ここまでは良かったが、急ぎ過ぎた同選手は両足裏でカンセロにタックルを見舞ってしまった。
あまりに不用意なタックルで、一発退場はやむなし。ジャカの悪癖が出てしまった瞬間と言わざるを得ない。しかし、ジャカにこれほど多くのタスクを、それもシティを前に与えたアルテタ監督の采配にも疑問は残る。これではパンクすることは、ある程度想定できたはずだが…。
大敗はアルテタ監督の責任がもちろん大きい。一切攻められず、明確な修正などもなかった。ただ一方で、スペイン人指揮官に同情する部分が“全くない”とも言い切れない。