鹿島が自信を取り戻した証とは…
得点までの流れは、相手のクロスを三竿健斗が拾い、ディエゴ・ピトゥカがドリブルで猛然と持ち上がってスルーパス。ここに上田が鋭く反応し、畠中の背後を突いてフィニッシュに持ち込んだ。右足を振り抜く形だったが、シュートには迷いが一切、感じられなかった。
こうして2人の得点源が効率よくゴールを奪ったことで、鹿島はその後、割り切って守備に徹することができた。相馬監督は「もう少し我々の攻撃の時間を増やしたかった」と言うが、2点のビハインドを背負ったマリノスが反撃に打って出るのは自明の理。強固なブロックを作ってそれを跳ね返し続けたのだ。
後半にマリノスが3トップ・3枚替えに踏み切り、水沼宏太、杉本健勇、エウベルという陣容になってからはサイドを攻略され、背後も狙われて苦しんだものの、鹿島の高い守備意識が失われることはなかった。犬飼智也、町田浩樹の両センターバックを軸とした最終ラインが崩れることはなかったし、ボランチのパートナーがピトゥカからレオ・シルバへと変わった三竿にしても的確なポジショニングを披露。中盤のスペースを埋め続けた。
特にボランチ陣の安定は見逃せない。東京五輪前は三竿が不振に陥り、ベンチを温める時期もあったが、中断期間を経て本調子を取り戻した印象だ。ピトゥカもJリーグに適応し、持ち前のダイナミックさと配球センスに磨きがかかってきた。レオ・シルバが入った後半19分以降はセカンドトップの位置でもプレーするなど、幅広い能力を見せつけており、多様な組み合わせで戦えるメドがついたのもプラスと言っていい。
こうした面々が躍動することで、常勝軍団らしい手堅い守備が戻ってきたのは、何よりの朗報と言っていい。東京五輪期間の7月24日のガンバ大阪戦以降、リーグ6試合でクリーンシートが4試合、それ以外の2試合も1失点という堅守を見せているのも、チーム全体が自信を取り戻した証拠ではないか。