なでしこジャパン(サッカー日本女子代表)の中心選手として東京五輪に出場したMF長谷川唯は、今夏から世界最高峰のイングランドリーグに挑戦する。半年にわたるミランでの経験や初めて参加した五輪などを踏まえ、日本女子サッカー界が進むべき道とはどんなものだろうか。イギリス渡航前にじっくりと話を聞いた。(取材・文:舩木渉)
「もっと理論的に」の真意
――東京五輪、お疲れ様でした。終わってから少し時間が経ちましたが、改めてあの大会を振り返ってどんなことを考えていますか?
「大会期間中に試合をこなしている時も、終わってから振り返ってみても、やっぱり自分たちの力不足だなというのはすごく感じました」
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――ずっと気になっていたことがあります。準々決勝のスウェーデン戦、長谷川選手が交代でベンチに下がる時のとても険しい表情が印象的だったんです。あの時はどんな感情を抱いていたのでしょうか。
「時計を見て、まだ少し時間があったので、もっとやりたかったなというのと、『ここから最後にもう1点、もう2点取りにいくぞ!』というタイミングだったというのもあって、悔しかったですね。もちろん自分の中ではそこまで悪い感触ではなかったので『もっとできたな』という気持ちもあって」
――試合が終わって東京五輪敗退が決まった時にはどんな気持ちになりましたか?
「全員で最後まで戦って、終わった瞬間は2019年のワールドカップとは少し違った感覚でした。みんなが泣いているのを見て、涙をもらってしまったんですけど、自分の中ではやりきっての悔しさより『もっとやらなきゃいけない』という次のステージへの気持ち、危機感の方が大きかったです」
――あのスウェーデン戦の後、ミックスゾーンで「もっと理論的に、どこに立つとこういう選手が空いてくるというのも理解しながら対応していかないと」「少しのスペースでも、どこが空いているかを共有できないのはまだまだ課題。もっと共通認識を持てる」と話していました。この言葉の真意を、もう少し詳しく教えてください。
「海外のサッカーが変わっていくのをすごく実感している中で、日本も同じものを取り入れなければいけないと感じていました。自分は日本でプレーしている時にポジショニングの重要性を教わって、プレーの幅が広がったんです。そのうえでのワールドカップと東京五輪で、対戦相手がポジショニングを大事にしたプレーをしてきて、改めて『理論』の重要性を認識しました」