お粗末な失点で際立つ古橋の存在感
一方、失点シーンはお粗末すぎた。ポステコグルー監督も「いい形で先制してスタートできたのに、2つもダメなゴールを与えてしまった」と悔やんでいた。
先制した直後の6分、セルティックのセンターバックに入っていたDFスティーブン・ウェルシュが相手GKからのロングボールの処理を誤ったところから悲惨な失点が生まれた。背後で味方のミスをカバーしようとしたGKジョー・ハートが、AZのFWザカリヤ・アブハラルに足もとのボールをかっさらわれてしまう。当然、ゴールは無人。難なく同点に追いつかれてしまった。
さらに26分には、セルティックのDFカール・スターフェルトがクリアを試みた際にまさかの空振り。軸足に当たったボールは意図したのとは逆方向に飛び、自陣ゴールに吸い込まれた。スターフェルトのミスを誘発する絶妙なクロスをあげたのは、AZの日本人DF菅原由勢だった。
「我々はただ戦わねばならなかった。後半は少し良くなって、ゲームをコントロールして、必要な時にはうまく守ることもできていた。仕事はやり遂げたと思うし、本戦に進めたことが重要だ。グループステージの戦いを楽しみにしている」
ポステコグルー監督は試合後のフラッシュインタビューでEL本戦出場をポジティブに捉えていたが、胸の内はどうだっただろうか。AZはボール支配率61%を記録し、シュート数でもセルティックを上回った。後半は耐える時間帯も長く、「自分たちのサッカー」ができたとは言い難い。突拍子もない2失点にも腹わたが煮えくり返っているのではなかろうか。
苦しい試合だったからこそ、決定的な活躍を続ける古橋の存在感が際立つ。セルティック加入からの公式戦7試合で7得点を挙げ、一気にエースの座を自分のものにした。EL本戦出場に関しては彼がいなければ厳しかっただろう。指揮官やチームメイトたちからの信頼も厚い。
ライバルチームであるレンジャーズのサポーターから人種差別を受ける対象になったというのは、ある意味「認められている証拠」と捉えられなくもない。当然あらゆる差別は非難されるべきものであり、古橋の負った精神的なダメージは計り知れないが、期待値と注目度がぐんぐん上がっているのを実感するエピソードだった。