新10番はなぜ躍動できたのか
データサイト『Who Scorede』によるこの試合のMOMにはGKメニャンが選出されている。ファインセーブを連発し、正確なロングフィードから先制のキッカケを作るなど、文句なしのパフォーマンスであった。
そして、フィールドプレーヤーで最も高い評価を得たのは新10番B・ディアスである。レアル・マドリードからのレンタル期間を延長した同選手は決勝ゴールを奪取し、それ以降も幾度となく攻撃にアクセントを加えるなど、サンプドリア守備陣を大いに困らせていた。
インテルに去った前10番ハカン・チャルハノールに比べるとキック精度はやや劣るかもしれないが、ドリブルで剥がす能力はトルコ代表MFを上回っている。この日もDFを振り切り味方を活かす場面が何度かあった。また、小柄ながらキープ力も高く、深さだけでなく時間も作れる。ミランにおける攻撃の新たな核になれるだけの力は、十分に示したと言えるだろう。
では、なぜ新10番はここまで持ち味を発揮することができたのだろうか。
試合後、ステファノ・ピオーリ監督は「サンプドリアはディフェンスの強度が高い試合を展開していたので、ディアスの位置を意図的に下げた。それが良い形でハマってくれたので、チャンスが生まれたね」と『スカイ・イタリア』に話している。
確かにゲームを振り返ると、B・ディアスは最前線オリビエ・ジルーの下、というよりはサンドロ・トナーリとラデ・クルニッチによるダブルボランチの脇に降りることが多かった。21分の場面が最もわかりやすいが、B・ディアスが落ちることで瞬間的には4-3-3のような形になっている。
結果的にこれがサンプドリア側の対応を難しくさせ、背番号10はよくボールに触れ持ち味を発揮しやすくなっていた。事実、B・ディアスは交代する69分までチーム内で3番目(前線の選手では最多)に多いタッチ数を記録していたのだ。トップ下から降りることにより1トップで先発したジルーとの距離が空き、彼を多くは活かしきれなかったという問題こそあったが、B・ディアスの能力を引き出すという意味では効果的な采配であったと言えるだろう。
ミランは次節、ホーム開幕戦でカリアリと対戦する。ここで再び新10番が輝くのか大いに注目したい。
(文:小澤祐作)
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