メッシのいないチームで新たな武器になるのは…
メッシというゴール大量製造機が不在の中で4得点を奪ったことも大きな評価に値するポイントだ。ソシエダの守備がものすごく脆かったわけではなく、チーム全体として意識した縦に速い攻撃がハマった結果と言えるだろう。
その中でとくに非凡な働きを見せていたのは、今夏新加入のデパイである。このオランダ代表FWは、プレシーズンマッチからの好調ぶりをそのままシーズン開幕まで持ち込んでいた。
先述した通りスタートポジションは3トップの中央だったが、ただ前に張るだけでなく、流れの中ではサイドに流れたり少し下がって組み立てに関与したりと柔軟な動きでソシエダに的を絞らせなかった。
とくに効きまくっていたのがダイレクトプレーである。ソシエダはボールが出たタイミングで素早く人に寄せ激しく当たりにくるが、デパイはそれをワンタッチパスやワンコントロールで何度も無力化。そして良いタイミングでサポートに回るペドリやフレンキー・デ・ヨングにボールを預け、チーム全体のラインを押し上げている。ここの連係は、新加入選手とは思えぬほどスムーズだった。
そのデパイはこの日の4得点のうち、2点に絡んでいる。19分にはピケの先制点を精度の高いFKで演出。59分にはDF2人を引き付けてジョルディ・アルバへ華麗なパスを送り、それがブライスワイトのゴールに繋がった。
90分間のスタッツはシュート数2本、ドリブル成功数2回、パス成功率78%。キーパスは4本で両チームトップとなっており、そのうち1つがアシストとなっている。ゴールこそなかったが、十分な成績だ。
マンチェスター・ユナイテッド時代は独善的なプレーが目立ち批判を浴びたデパイだが、リヨンで味方を活かす術を高いレベルで習得し、より大人になった。それを今回、改めてバルセロナでも証明したと言えるだろう。まだシーズンは始まったばかりだが、メッシのいないバルセロナにおいて、デパイの非凡な技術力とキック精度は新しい武器になるかもしれない。
(文:小澤祐作)
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