アンジェ・ポステコグルー前監督がスコットランドへ渡ってから約1ヶ月半が経ち、ようやく横浜F・マリノスに新指揮官が着任した。前任者の哲学を色濃く受け継いでいるケビン・マスカット新監督とはいかなる人間なのだろうか。彼自身の言葉や周囲の証言からその人物像を紐解いていく。(取材・文:舩木渉)
リーダーとしての人間性
試合終了後の整列が解けると、名古屋グランパスのGKミッチ・ランゲラックは真っ先にある人物のもとへ歩み寄っていった。
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反対側から向かってきたのは横浜F・マリノスのケビン・マスカット監督だった。ランゲラックが相手指揮官と抱擁を交わしたのは、単に同胞のオーストラリア人だからではない。2人は10年来の間柄だ。
マスカット監督は「昔から知っている選手」であるランゲラックを「選手として素晴らしいGKというだけでなく、さらに重要なのは最高の人間性の持ち主だということ。日本で再会できたこともうれしいし、彼が次節以降もいいプレーができることを祈っている」と褒め称えた。
ランゲラックがまだ駆け出しの若手だった頃、2人はオーストラリア・Aリーグのメルボルン・ビクトリーで共にプレーしていた。当時すでに現役生活の終盤に差し掛かっていたベテランのマスカット“選手”は、偉大な先輩にあたる。
グランパスのゴールを預かる守護神は誠実で心優しい人格者としても知られるが、その彼に慕われるマスカット監督もまた相当な人格者であるのは間違いない。メルボルン・ビクトリーやオーストラリア代表ではキャプテンを任されていた経験もある。また、監督としての前任地であるシント=トロイデンVVの関係者からも、リーダーとして常に選手やスタッフ1人ひとりのことを思いやる卓越した人間性の持ち主だったという話を聞いた。
マリノスで実際に指揮を執り始めてから10日足らずだが、マスカット監督はすでに選手たちの心をつかんだ。
小池龍太は「監督が来てくれてチームの雰囲気が引き締まる感じはすごくありますし、試合の入りの集中力だったり、(チームを)オーガナイズしてボス(アンジェ・ポステコグルー監督)の時のように引っ張ってくれるところは、チームにとってすごくプラスになっています」と語る。
「彼の性格もすごくいい雰囲気。チームとも選手ともすごくコミュニケーションを取ってくれますし、そういったところからチームの雰囲気が良くなって、チームがさらに上昇気流に乗っている要因になっていると思います。
(マスカット監督の)サッカーに対する強い思いとか、このチームをより強くして、今年のチャンピオンになるという熱い姿勢に僕らが引っ張られて、ついていっている状態。それ(優勝への思い)を選手自身が強く持って、監督と一緒に前進できるようなチームになっていくんじゃないかと思います」