日本代表につながる武器と長期的な課題
メダルに届かなかったのは残念だが、ベスト4はこのチームの力からいって全く偶然ではない。いってしまえばサッカーの五輪男子は年代別の大会である。これが頂点ではなく、A代表につなげることが結果以上に重要だ。その点ではいくつかの成果をみせていた。
ゴールキックでロングボールを使うことがほとんどなく、最深部からのビルドアップを試みて上手くやれていた。4バックと2ボランチはA代表に転用できるので、これはそのままA代表の進化につながる。
逆に、相手のビルドアップに対するハイプレスも機能していた。素早いプレスバックは武器になっていた。ただ、スペインとメキシコに対しては常に効果的だったわけではなく、プレスが裏目に出てカウンターを食う場面もしばしばあった。強度を増したのは進化だが、5試合以上を勝ち上がるためにはこれを頼りにはできないことも実感したはずだ。
アタッキング・サードは個人技に依存していた。今大会は久保と堂安のコンビだったが、近接するコンビネーションは諸刃の剣で、メキシコのPKにつながった場面では久保、堂安のパスワークが乱れ、酒井宏樹が前進していて空になったスペースをつかれている。久保&堂安にかぎらず、近接のコンビは日本代表では90年代から見られたもので、ずっと諸刃のままである。今後これをどう扱うかは興味深い。
相馬、三笘の単騎突破の切り札を増やせた。ただ、チームプレーのロジックでスペインと大きな差があることを準決勝で痛感させられた。これは来年のワールドカップには間に合わないので中期的ないし長期的な課題になる。
GK谷晃生の活躍、A代表の不確定ポジションだった左SBで中山が急成長を示したこと。ディフェンスラインとボランチの安定感も素晴らしかった。A代表とのつながりにおいて収穫の多い大会だった。
(文:西部謙司)
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