「オリンピアンとメダリストは全然違う」
その後もU-24日本代表は守勢に回る時間帯が長く、効果的に交代枠を使って攻め込んでくるスペインに苦しめられた。何とか120分間耐え切れるはずだったが、アセンシオだけはクオリティが違った。失点シーンに吉田は直接的に関与していないが、「最後のワンプレーだけ。この差が…。伊達にレアルでやっているだけのことはあるなと思いますね」としみじみ語ったというから、傑出した個の凄さを改めて痛感したのだろう。
切れ味鋭いナイフのようなアタッカーを止める術をチームとして見出せなかったのは、リーダーとして、ベテランDFとして悔やまれるはず。ラストの時間帯に前線に上がってパワープレー要員を務めたがゴールを奪えず。大いなる不完全燃焼感を味わったに違いない。
ただ、幸いにも、彼らには失敗を取り返す場がある。6日の3位決定戦・U-24メキシコ代表戦がまさにそう。2012年ロンドン五輪の時は準決勝でメキシコに敗れた時点で燃え尽き、韓国との3位決定戦に負けてしまったが、同じ轍を踏むことだけは許されない。「3度も五輪に出ていて1度もメダルを取れないのは情けない。ただのオリンピアンとメダリストは全然違う」とOA枠での参戦が決まった時点から言い続けてきた彼には、その教訓を生かす責務があるのだ。
試合後、ベンチ前で遠い目でピッチを見つつ体育座りをしていた久保建英らを筆頭に、若き面々の挫折感は想像を絶するものがある。だが、心身ともに切り替えなければメダルには手が届かない。同じくロンドンで4位に甘んじた一員である酒井宏樹も「簡単には切り替えられない」と率直な本音を吐露していたというが、それでもやらなければつかめないのが、五輪メダルという高い領域なのである。
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