【写真:JMPA代表撮影】
U-24日本代表は7月31日に東京五輪の準々決勝に臨み、PK戦の末、U-24ニュージーランド代表に勝利して2大会ぶりの準決勝進出を果たした。
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久保建英の連続ゴール記録はグループステージの3試合で途切れた。それでも「今日は僕以外にヒーローがいますし、たまたま3試合、僕がヒーローみたいな感じで取り上げてられていましたけど、勝てば…勝てばいいので、本当に」と背番号7は死闘を切り抜けての勝利の喜びを噛み締めていた。
PK戦ではGK谷晃生がニュージーランドの2本目を見事な反応でストップ。久保が言う「ヒーロー」とは、紛れもなく谷のことだ。
「自分が1点取って、1-3とかで負けるよりも、0-0でPK。谷選手が止めてくれて、吉田選手が決めてくれて、自分の番まで回らずに勝ち、こんなに嬉しいことはないと思います」
久保は谷とともに、4年前のU-17ワールドカップの決勝トーナメント1回戦でU-17イングランド代表にPK戦で敗れた苦い経験を味わっている。ニュージーランド戦でもPK戦になり、当時の記憶が蘇ってきたという。だが、今回はその先の結末が違った。
「僕も一瞬脳裏によぎりましたけど、成長した谷選手なら何の心配もないと思いました。こうやって国際舞台で同じ、前回(U-17ワールドカップ)はベスト16でしたけど、同じ決勝トーナメント1回戦。あと一歩でイングランドに負けてしまいましたけど、今回は谷選手が止めて、たぶん谷選手に怖いものはないと思う。あとは僕たちが、次はPK戦までもつれ込まないように、しっかり試合を決めたいと思います」
守護神への信頼は厚い。久保は谷の1歳下だが、ピッチ内外で非常に仲が良いことでも知られる。だからこそ信じる想いは強かった。
「途中から僕の勘違いじゃなければ(谷は)笑顔も見せていると思いますし、それくらいいい緊張感と自信を持ってPKに入ってくれたと思う。あんなGKがチームにいてくれたら怖いものはないので、僕たちは貪欲に点を取りにいきたいと思います」
次は久保にとっても縁の深いU-24スペイン代表との準決勝になる。五輪直前の国際親善試合で対戦した際は、前半に堂安律のゴールで日本が先制したものの、終盤に追いつかれて1-1のドロー。決着はつかなかった。
だが、次は東京五輪の準決勝。何としてでも勝たなければ、日本の目標である金メダルには届かない。思い入れのある国との対戦ということもあり、「この大会、グループが決まった瞬間から、順当にいけば準決勝はスペインだろうなというのを、どこかで頭の片隅には置いていた」という久保はこれまでと違う姿勢で試合に臨もうとしている。
「自分が一番いい準備をして、一番いい形でスペイン戦に入りたいと思います。この試合に関しては『俺が、俺が』という強い気持ちで、変に自己中になるということではなく、『俺が引っ張る』『俺がチームを勝たせる』という気持ちで、今までこういうこと言ったことないですけど、ちょっとビッグマウスになろうかなと思います」
これまでチームの勝利が最優先で、貢献するならどんな形でもいいと久保は言い続けてきた。ところが、メダルの懸かったスペイン戦となれば話は違う。「俺がチームを勝たせる」というエゴを存分に出す心算だ。
「どう倒すかとかは、もうどうでもいいと思います。勝てばいいので、どんな戦い方になるか、本当にわからないですけど、勝ちます。勝たせてください」
取材の最後に「勝たせてください」と、珍しい願いの言葉も残した。これは応援してくれるファン・サポーターに向けてなのか、目の前で囲んでいたメディアに向けてなのか、サッカーの神様に向けてなのかはわからない。
それでも久保のスペイン戦に対する想いが人一倍強いことだけは神様も疑いようのないほどの揺るぎない事実だ。
(取材・文:舩木渉)
【了】