「五輪が1つの区切りになるんじゃないかと」
森保監督にしても、上田を100%の状態で使えるメドが立ったことは大きい。31日から始まる決勝トーナメント以降は試合の強度や激しさ、メンタル的な重圧は1段階も2段階もアップする。次戦の相手・ニュージーランドは大柄な選手がズラリと並ぶA代表に近いチームだし、その先にはスペインやコートジボワール、ブラジルといった強敵が待ち構えている。そこで1トップに上田と林という2つのオプションがあれば、U-24日本代表はより多彩な仕掛けを見せられるだろう。
ここまでの南アフリカ、メキシコとの戦いを見ても分かる通り、林は173cmと小柄ながら、屈強な相手にうまく体を預けてタメを作れる選手。機を見て背後を取る動きにも長けている。上田は林ほどボールを収められないかもしれないが、ゴール前の凄みとシュートの多彩さ、研ぎ澄まされた得点感覚では大いに光るものがある。フランス戦ではあと一歩のところで届かなかったが、ゴールへの匂いは大いに感じさせてくれた。
決勝トーナメント以降は久保や堂安がより厳しくマークされると見られるだけに、彼が決め切ることが強く求められてくる。それは「絶対的FW」と長く位置付けられてきた自身が誰よりもよく分かっているはずだ。
「五輪は分岐点。活躍すれば海外も見えてくるかもしれないですし、選ばれなければ、またその次のキャリアに向けて頑張るだけ。五輪が1つの区切りになるんじゃないかと思います」と大会前に語っていた上田。出遅れた男が成功を勝ち取るためには、ここからが正念場。納得できる結果と内容で日本を53年ぶりのメダルへと導いてほしいものである。
(取材・文:元川悦子)
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