「絶対的FW」の賢さと戦術眼
この場面に象徴されるように、上田は試合開始時から背後に抜け出そうというアクションを再三、見せていた。こうした地味な駆け引きを何度も繰り返したからこそ、いざという時に敵を攪乱できる。森保監督から「東京五輪世代の絶対的FW」と位置付けられてきた男の賢さと戦術眼が改めて印象づけられたと言っていい。
後半に入り、トップ下が久保から三好康児に代わってからも、上田の前線での迫力が低下することはなかった。通算2枚目のイエローカードを受けた酒井宏樹が下がり、橋岡大樹が入った直後の後半12分にも、彼の鋭いマイマスクロスに飛び込む泥臭さを披露。「何としてもゴールという結果を残したい」という強い思いがにじみ出ていた。
その願いは残念ながら最後まで叶わなかったが、後半25分の三好の3点目の場面で中山のクロスをしっかり収めて旗手に戻すなど、ターゲット的な役割も確実に遂行し続けた。そのうえで90分間フル出場し、4-0の勝利とA組1位通過に貢献したことで、大きな自信につながったはず。直前合宿ではなかなかコンディションが上がらず、本大会に入ってからも林の前線での存在感を目の当たりにする日々を過ごした分、この領域まで到達できた安堵感は少なからずあるだろう。
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