【写真:Getty Images】
サッカー日本女子代表(なでしこジャパン)は27日、東京五輪のグループステージ第3節でチリ女子代表を1-0と下し今大会初勝利を収めた。
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苦しい試合だった。それでも終盤の77分にFW田中美南のゴールが生まれ、勝ち点3を獲得。3試合で1勝1分1敗の勝ち点4とし、グループEの3位で決勝トーナメント進出を決めた。
今大会で10番を背負うFW岩渕真奈は、試合終了の瞬間に「何と言っていったらいいのかわからないというか、とにかくよかったという言葉に尽きるというか…ひとまず解放された感じはありました」と語る。
グループステージ初戦でカナダ女子代表と引き分け、第2戦ではイギリス女子代表に力の差を見せつけられての敗戦。決勝トーナメント進出が危ぶまれる状況になったが、なんとかメダル獲得への希望をつなぐことができ、安堵感が一気に押し寄せたのだろう。
試合後のインタビューでは涙も流した。取材エリアで記者の質問に答える際も、涙で声を詰まらせながら必死に言葉を絞り出していた。
「難しい状況で、本当にプレッシャーを……いままでにないプレッシャーを感じていたのが正直あって。まあ、サッカーって1人でするものではないので、チームとして向きたい方向というか、やりたいことが一瞬わからなくなりかけていたときもあった。とにかく本当に今、勝って次につながった、3位だけど、それがすべてかなと思います」
10番を託され、エースとして期待されながら、チームとしても個人としても思うような結果を残せていない。ドイツ女子ワールドカップで優勝を経験してから10年、年長者として責任を負う立場となり、自国開催の五輪で金メダル獲得を期待されるなかで背負っていた重圧は想像を絶するものだった。
「やっぱり1試合目(カナダ戦)で面食らって、2試合目(イギリス戦)はなかなか難しい試合で、3試合目は勝たないといけない状況が、自分たちを少しずつ強くしてくている感じはありますけど、それでもまだ足りないし、まだまだ戦わないといけないということを、いろんな人に言われる。
もっともっと口だけでなく、今日は自分たちが目指す何かを感じ取ってもらえるようなプレーをしようと話していた中で、勝ったことによって(決勝トーナメントに)つながったので、次の試合は強敵相手に自分たちがどれだけできるのか楽しみというか、本当に自分たちはやるだけなので、頑張りたいと思います」
目に見えない重圧に押しつぶされそうになりながら、岩渕は求められる理想と直面する現実との狭間でもがいている。それでも「まだまだ、次で負けるわけにはいかない」と、懸命に前を向く。
準々決勝の相手はスウェーデン女子代表に決まった。グループステージ初戦でアメリカ女子代表に3-0で圧勝し、第2戦では大会直前になでしこジャパンと引き分けたオーストラリア女子代表から4点を奪って快勝。控え選手中心で臨んだ第3戦もニュージーランド女子代表を圧倒して3連勝を飾っている。
間違いなく今大会最強クラスのチームが、なでしこジャパンと岩渕の前に立ちはだかる。
「相手がどこだろうと本当に難しい試合になるのは間違いないので、今の自分たちの実力的に、しっかり相手の分析だったり、自分たちのコンディションの回復だったり、とにかくいい準備をしてぶつかるだけ。もっともっとひたむきに、全員で戦えるチームにならないと先は続かないと思うので、そういうところは意識してやっていきたいと思います」
岩渕の言葉通り、「サッカーって1人でするものではない」。なでしこジャパンはメンバー22人全員の力を合わせてスウェーデンに立ち向かっていかなければならない。1人で重圧を全て背負いこんでしまっては、持てる力を100%発揮することなど不可能だ。
(取材・文:舩木渉)
【了】