【写真:Getty Images】
東京五輪のグループステージ第2節が25日に行われ、U-24日本代表はU-24メキシコ代表に2-1で勝利を収めた。2連勝でグループ首位に立ち、決勝トーナメント進出に近づいている。
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序盤の2得点があまりにも大きかった。開始6分でMF久保建英が先制ゴールを挙げ、11分にはMF堂安律のPKで追加点。後半に1点差まで迫られたものの、グループ内最強と見られていたメキシコに競り勝った。
決勝点となるPKを獲得したのは、MF相馬勇紀だ。9分、ペナルティエリア左でドリブルを仕掛けると、今大会初先発の背番号16は相手ディフェンスの懐に潜り込むようなドリブルで突破し、左足でグラウンダーのクロスを送る。お膳立てを受けた堂安はシュートまで持ち込めなかったが、クロスの場面で相馬が相手DFセサル・モンテスのタックルを食らっており、VARの助言と主審のビデオ確認の結果、ファウルの判定で日本にPKを与えられた。
このPK獲得のシーンについて、試合終了直後にテレビ中継のインタビューで鹿島アントラーズ時代の先輩にあたる内田篤人氏から質問を受けた相馬は「(酒井)宏樹さんと練習から話していたので、『ペナルティエリアでの仕掛けは大切』と言われていたので、それが(PK獲得に)つながったかなと思います」と語った。
大会前に静岡県で行われた事前合宿中、ゲーム形式の練習での一場面をよく覚えている。相馬は対峙したDF酒井宏樹に対し果敢に仕掛けたが、抜ききる直前で止められてしまった。
その直後、酒井が何やら相馬にアドバイスを授けていたのである。その内容について、酒井は次のように話していた。
「あのときは勇紀が僕のところから、抜きにかかったときに一歩かわしたので。そのままあの体格を生かして自分の下にもぐり込んで、1個前にボールを出してしまえば、ちょっと僕が勇紀に触ればファウルでPKになるから、そういう駆け引きは細かいところかもしれないけど、そこでPKになれば1点取れるし、フリーキックになればそこから1点生まれるかもしれない。そこの一瞬の判断というか、そこでちょっと遅くなったので僕もあのとき止めることができたんですけど、『勇紀だったらできる』と思って声をかけさせていただきました」
「(フランスの)リーグ・アンでプレーするドリブラーだったりアタッカーは、必ずあそこで僕の前に入り込んでくるので、(PKを与えかねないので)僕がファウルしてはいけない状況に追い込まれる。あれはたぶんドリブラーとしたら『いい方法』というか、いいドリブルのコースなんじゃないかなと思います」
メキシコ戦のPK獲得の場面で、相馬はやや強引にゴールライン際まで侵入してクロスを上げた。強い踏み込みで一瞬相手DFと入れ替わった最後のひと伸びが、後手の対応とファウルを誘ったのである。まさに酒井のアドバイス通りのプレーだった。
相馬も「あのシーンで言えば、『もっと内側にドリブルのコースを変えていった方がいいよ』とアドバイスもあって、『確かに。本当にその通りだな』と思いました」と納得の助言。心に響いたのだろう。
「(相手が)間合いを詰めてくると、入れ替わったときに後ろから引っかけられたらPKをもらえます。Jリーグだと抜かれない守備をしてくるので、最後はクロスで終わることが多いんですけど、ACLでも結構やっていたように、潜り込むドリブルというか、ペナルティエリアの、何ならゴールキックを蹴るゴールエリアのギリギリくらいまでえぐっていくドリブルを特に意識したいと思っています」(相馬)
先輩からの教えを、相馬は五輪本番のピッチの上でその通りに表現して見せた。世界基準を知る選手からのアドバイスが、短期間で若手の成長を引き出したとも言える。早い段階からのオーバーエイジ合流や事前合宿での準備の成果は、しっかりと東京五輪で結果につながった。
(取材・文:舩木渉)
【了】