ボールを奪い続ける遠藤航の頼もしさ
相馬勇紀が得意のドリブルで左からペナルティエリア内を打開。セサル・モンテスの足が引っ掛かり、PKの判定が下された。キッカーは堂安。対峙するのは名手ギジェルモ・オチョアだったが、真ん中に左足を一閃して強心臓ぶりを見せつける。アタッカー陣が躍動し、日本は大きなアドバンテージを得た。
序盤から2点のビハインドを背負えば、メキシコがボールを支配して攻勢をかけてくるのは当然の流れ。そこで輝きを放ったのが、昨季ドイツ・ブンデスリーガ・デュエル王の遠藤航だった。普段からバイエルン・ミュンヘンなどを相手に守勢に回る時間の長いゲームを数多くこなしている経験値が出たのか、相手の攻撃の芽を摘むボール奪取を何度も披露する。複数人に囲まれても確実にキープし、縦にボールをつける仕事もスムーズにこなしていた。
「前半は失点をしないことを第一に考え、つねに前向きにボールを奪えるように意識した」と本人は語ったが、この冷静さと余裕は5年前のリオデジャネイロ五輪の頃にはなかったもの。当時は浦和レッズでDF、代表でボランチという中途半端な使われ方をしていたのも大きかったが、ナイジェリアとの初戦で派手な打ち合いの末、4-5で敗れたことを最後まで引きずってしまった。
しかし、当時のナーバスだったメンタリティは消え去り、今は堂々と自信満々でピッチに立っている。相手がメキシコでも問題ないどころか、むしろ精神的優位な状況で渡り合う頼もしさを見せていた。
後半に入っても、遠藤のパフォーマンスが下がることはなかった。林大地と絡みながら久保に縦パスの配球を試みた後半13分のチャンス、ボランチコンビを組む田中碧をサポートしながら久保→中山雄太→林という攻めの形に結び付けた後半31分のシーンなどは、遠藤の存在感がいかんなく発揮された形。中盤でのデュエル力と構成力はチームを大いに安定させていた。