久保建英とは「話さずとも共通認識ができている」
「お互いに特に話はしていないけど、タケに預ければボールが返ってくるとか、チームにプラスなことをやってくれると信頼しているし、逆に彼からの信頼も感じる。話さずとも共通認識ができている」と堂安は2人のホットラインに自信を見せたが、久保にしても同じだろう。2人が絡むことでチーム全体の攻撃バリエーションが増えるのは紛れもない事実。U-24ホンジュラス代表戦から2試合連続スタメン出場した林や負傷から復帰した上田綺世らFW陣も力強く感じているはずだ。
実際、堂安が下がった後半を見ると、攻撃リズムや連動性がやや低下した。三好康児と久保の関係は悪くなかったものの、どうしてもフィニッシュの迫力が不足気味になってしまう。最終的にスペインのカルロス・ソレールに同点弾を奪われ、1-1のドローに持ち込まれたのも、ズルズル押し込まれて攻め返せないという悪循環が続いたからだ。
やはり堂安と久保が揃っていれば、「ここ一番で決められる」というシュートの精度と勝負強さがある。それは今のチームにとって不可欠なポイントだ。久保がお膳立てして堂安が決める、あるいはその逆も含めて、東京五輪本番では10番と7番のコンビが日本の攻撃陣をけん引すること。それがメダルへの絶対条件と言っても過言ではない。
もちろん初戦のU-24南アフリカ代表を筆頭に、1次リーグ同組のU-24メキシコ代表、U-24フランス代表は「日本の生命線」とも言える2人のコンビを徹底分析し、止めにくるだろう。本人たちも想像以上に苦労するかもしれない。ただ、自分たちがマークされる分、周りが空いてくるということを賢い久保や堂安は分かっている。味方を使って自分たちが生きる術を見出してくれるはずだ。
そうやって林や上田、前田大然、相馬ら周囲のアタッカー陣が新たな得点源になれれば、攻撃全体が活性化する。むしろ、そうならなければ、53年ぶりのメダル獲得という高い領域には手が届かない。スペイン戦で可能性と課題の両方を感じたことは、必ずや本番を戦ううえでの糧になる。そこは希望を持ってよさそうだ。
これで事前テストマッチは終わり、あとは本番に突入するだけ。吉田麻也が主張した有観客開催への変更が現実になれば理想的だが、環境がどうなっても日本は最後まで全力を尽くして戦い抜くことが肝要だ。先人たちを超える好結果を彼らには強く期待したい。
(取材・文:元川悦子)
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