足し算したマンチーニと引き算したサウスゲート
後半に入ってもイングランド代表は5バックを敷いて守りを固めてきたため、イタリア代表は立ち上がりからボールを支配することができた。ジョルジーニョとマルコ・ヴェラッティは頻繁にポジションを入れ替えて的を絞らせず、着実に前へとボールを運ぶ。そして、左サイドバックのエメルソン・パルミエリは高い位置を取り、右サイドのジョバンニ・ディ・ロレンツォがバランスを取る。ここまでは、前半にも見られた形だった。
それを見たマンチーニ監督は後半開始10分という割と早い時間に動き、新たなスパイスを加えた。ニコロ・バレッラに替えブライアン・クリスタンテ、インモービレに替えドメニコ・ベラルディを投入したのだ。
CFのインモービレが下がったことで、左サイドのロレンツォ・インシーニェが中央にポジションを移すことになった。これが功を奏し、ある程度自由に動いた背番号10が頻繁にスペースを生み出すなど、相手守備陣を“曖昧”とさせている。また、右サイドに入ったベラルディは、前半にはなかった外から中へのランニングでイングランド代表の最終ラインを動かしていた。
こうして選手交代によりイングランド代表を惑わせたイタリア代表は、押し込む展開が続く中セットプレーから同点弾を奪取。完全に流れを変えていた。
サウスゲート監督には前半の3バックシステム採用以外にプランがなく、この時点でイングランド代表はもはやただ引くだけの状態になっていた。イタリア代表はそこをポゼッションとハイプレスで叩き続け、敵陣でのプレー時間を増やしている。
さらにイタリア代表にとって幸運だったのは、イングランド代表が失点後に4-1-4-1へとフォーメーションを変えたことだ。
彼らのこのシステムはほとんど機能していなかった。ヴェラッティとジョルジーニョが下がってボールに絡むためそこをケアされるが、カルヴィン・フィリップスの脇、つまりハーフスペースに位置するインシーニェとクリスタンテには明確なマーカーがいない状態。アッズーリはそこにボールを入れ続け、イングランド代表を困らせた。マンチーニ監督は冷静に足し算をしたが、サウスゲート監督は焦った結果、3バックをあっさり切り捨て4バックを使うという引き算をしたのである。