PKをめぐる是非
イングランド代表はPK戦に入る直前に2枚の交代カードを切っている。ジェイドン・サンチョを中盤、マーカス・ラッシュフォードを右サイドに入れた。残り時間は後半アディショナルタイムのみで、1点を取りに行くというよりはPK戦要員だったとみられる。しかし、3人目のキッカーを務めたラッシュフォードはポストにボールを当て、4人目のサンチョのキックはセーブされた。途中出場であまり試合に入れていなかった5人目のサカも失敗し、イングランド代表はPK戦で散った。
ジャンルイジ・ドンナルンマが素晴らしかったわけで、PKを失敗した3人を責めることはできない。イタリア代表もPKの名手であるジョルジーニョが外している。特に数分しかプレーしていない状態でキッカーを務めたラッシュフォードとサンチョにとっては、非常に難しかったのではないだろうか。しかし、これがうまくいっていれば称賛されていただろうし、2人を投入した指揮官の采配もあくまで結果論で、間違いだったと糾弾することはできない。
1994年のワールドカップ決勝で、ロベルト・バッジョはPKを外した。「PKを外すのは、蹴る勇気を持った者だけだ」という名言を残したが、失敗した姿は月日が経ってもバッジョの脳裏から離れないという。
敗れた記憶は勝つことで上書きしていくしかない。25年前のユーロ準決勝でPKを失敗したサウスゲートは、監督としてリベンジを果たした。幸いにも、イングランド代表のほとんどは来年のワールドカップも3年後のユーロも狙える。ロシアワールドカップでは28年ぶりのベスト4、ユーロ2020では史上初の決勝進出。イングランド代表は少しずつ歴史を作っている。
(文:加藤健一)
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