焦ったイングランド代表
イングランド代表にとって良くなかったことが2つある。1つは前半のうちからポゼッションを放棄していたこと。5-4-1ですらなく、ケインも戻って5-5で守っている。イタリア代表のハイプレスを受けると、簡単に前に蹴りだしてしまった。
デンマーク代表戦でもドイツ代表戦でも相手にボールを持たれる時間帯はあった。引いて守るときの安定感があるチームなので、それ自体は問題ない。ただ、体力も消耗するし、DFラインも押し上げられない。5-5で守っているだけではケインのポストプレーもラヒーム・スターリングのドリブルも使えず、攻撃の望みが絶たれた。
流れの中から失点をすることはなかったが、セットプレーによってスコアが動いた。イタリア代表のCKでこぼれ球をレオナルド・ボヌッチが押しこんだ。これで試合は振り出しに戻った。
もう1つ、良くなかったのは同点に追いつかれた後に4バックに変更したことだ。イングランド代表はトリッピアーに替えてブカヨ・サカ、デクラン・ライスに替えてジョーダン・ヘンダーソンを投入して4-1-4-1にしている。
まだ同点なので焦る必要はなかった。そして、守備を崩されていたわけではないので、DFラインをいじるのも得策には見えない。これまで通り辛抱強く時間を進めていった方が良かった。勝負を焦った采配が、結果的にイングランド代表を苦しめてしまった。
ロレンツォ・インシーニェの配置を変えるという微修正に留め、最後までブレずに120分を戦い抜いたイタリア代表と、動きすぎてしまったイングランド代表。力の差はなかったが、勝負を分けたのは試合運びだった。
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