称賛に値する指揮官の仕事ぶり
一部のメディアも含めて、イングランド代表に対するサポートの中には、代表チームを応援する楽しみをやや阻害するような行為も相変わらず存在している。傲慢な姿勢であったり、対戦相手の国歌に対するブーイングであったり、その他の行き過ぎた愛国的振る舞いであったり。だがそういった中でもサウスゲートが自分自身の信念を貫きつつピッチ上で結果を出すことができていることには大きな価値がある。
「彼はとにかく正しく振る舞う男だが、かなりの怒りや敵意にも晒されている。いつかはそれが彼に届いてしまうのではないかと恐れるのも無理はない。彼はこの国に残された最後の良識ある人間であるかのように感じられる」。決勝トーナメント1回戦でイングランドがドイツを破った試合のあと、バーニー・ロネー氏は50歳の指揮官についてそう書いていた。
「フットボールが母国に帰る」という常套句に現在どのような意味が込められようとも、元々このフレーズは、ほぼいつも落胆を味わうばかりのサッカーファンを皮肉るものとして書かれた歌であったことを忘れてはならない。ユーロ96に合わせてリリースされた曲であり、それは他ならぬサウスゲートが準決勝のドイツ戦でPKを失敗してしまった大会だ。その彼が、イングランドのファンに希少な歓喜の瞬間をもたらすことができるかどうかはまだ分からない。だがイタリア戦の勝敗にかかわらず、チームをここまで導いた彼の業績と仕事ぶりが称賛に値することは間違いない。
(文:ショーン・キャロル)
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