準決勝へ向け残る大きな不安
試合は結局1-1のまま延長戦に突入することになっている。数的不利に加え疲労も重なったスイス代表はさすがに自陣へ張り付け状態となり、対するスペイン代表はそこを叩き続けた。スコアが再び動くのは、時間の問題かと思われた。
しかし、スペイン代表は数的不利な状況にあるスイス代表から点を奪えず、結果的に120分間で1得点を挙げるに留まってしまった。スイス代表に大きな自信を与えたまま、運命のPK戦に臨むことになったのだ。
それでも、スペイン代表は最後まで「運」を味方につけた。GKウナイ・シモンの大活躍でPK戦を3-1で制し、優勝した2012年大会以来となるベスト4へ駒を進めている。この結果は、素直に評価するに値するはずだ。
しかし、スペイン代表が準決勝に向け大きな不安を残したのもまた事実。それはやはり、決定力の問題だ。
スイス代表の守備陣が最後まで集中力を切らさず、GKヤン・ゾマーも素晴らしいパフォーマンスを披露していたのも確かなのだが、それにしても押し込む力が弱すぎた。シュート数は実に28本にも積み上がっており、ペドリ(5本)、コケ(4本)、J・アルバ(4本)から何度もキーパス(シュートに繋がったパス)が出ていたにも関わらず、オウンゴールの1点に終わった攻撃陣の責任は重い。今に始まったことではないが、改めて大きな問題だと感じさせられた。
「今日はちょっと運が足りなかったかな」と話したのはスイス代表のシャキリ。スペイン代表はオウンゴールで先制を奪い、相手に退場者が出てPK戦を制すなど、最後まで「運」が活躍したことが勝利に繋がった。しかし、次はそうはいかないだろう。
準決勝で戦う相手はベルギー代表を下したイタリア代表だ。スイス代表戦より厳しい戦いを強いられると思われる中でいかにワンチャンスを活かせるかが重要となってくるが、今のスペイン代表にその力があるかは不安である。決定力に関しては明確な解決策はないが、FW陣の奮起に期待したい。
(文:小澤祐作)
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