試合が大きく動き出した後半
その理由はスイス代表の守備変更にあった。前半はジェルダン・シャキリがセルヒオ・ブスケッツに張ることでハリス・セフェロビッチ一人がセンターバック2枚を見るという形だったのだが、後半はシャキリもCBにプレッシャーを与えるように。そして、それに伴いチーム全体のラインも押し上がった。そのため、スペイン代表は前半のようにゆったりとボールを持つことが許されず、ビルドアップ時に簡単なミスも犯すようになった。
68分には、積極的に前へ出てきたスイス代表を前に自陣でボールを失い、ショートカウンターを許す。そして最後はDF陣の連係ミスが生じ、シャキリに点を奪われている。スイス代表にとってはこれがこの日2本目の枠内シュートだった。
スペイン代表はその後、攻撃時に左サイドバックのJ・アルバを一つ前に出し、右SBのセサル・アスピリクエタを最終ラインに残した可変式を採用。攻めのバリエーションをより増やし、スイス代表の攻略を試みている。しかし、同点としたラ・ナティの勢いは落ちない。スペイン代表の時間ではなかった。
しかし77分、またもルイス・エンリケ監督率いるチームに幸運が訪れた。レモ・フロイラーがジェラール・モレノにスライディングタックルを見舞い、一発退場を命じられたのである。少し厳しい判定だったようにも思えるが、いずれにしてもこれでスペイン代表は数的優位を得た。
もはやこうなると、戦術の駆け引きどうこうの問題ではなくなる。数的優位のスペイン代表がいかに早く崩すのか、そして数的不利のスイス代表がどこまで耐えるのかという、単純なものだった。
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