UEFAユーロ2020(欧州選手権)・ラウンド16、フランス代表対スイス代表が現地時間28日に行われ、3-3のドロー。PK戦の末、スイス代表がベスト8へと駒を進めることになった。なぜ、現世界王者フランス代表は敗れたのか。(文:小澤祐作)
緊急事態で3バック採用も…
ディディエ・デシャン監督にとって想定外だったのはリュカ・エルナンデス、リュカ・ディーニュという本職左サイドバックを同時に欠いたことだった。そのため、同指揮官は重要なスイス代表とのラウンド16で、ほぼ強引といってもいい3-4-1-2システムを採用せざるを得なかった。
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不慣れな左ウイングバックで起用された本職MFアドリアン・ラビオの不安を少しでも和らげるためにプレスネル・キンペンベ、ラファエル・ヴァラン、クレマン・ラングレのセンターバック3枚が先発にチョイスされたと見るが、このディフェンス陣は監督の思い虚しく早々に崩れる。15分、今大会初スタメンだったラングレがハリス・セフェロビッチに簡単に競り負けて先制点を献上した。
いきなり追う展開になったフランス代表だが、この大会で初めて3バックを使うということもあってか攻撃が噛み合わず、1点が遠い。バンジャマン・パバールがうまく試合に入れなかったため右サイドからの攻めに可能性がなく、左サイドは何度か良い形で崩したが、仕上げのクオリティーをことごとく欠いた。
ただ、パバールのプレー精度が悪かったとはいえ、あまりにも攻撃の形が左に偏り過ぎた。ラビオはもちろん、カリム・ベンゼマ、キリアン・エムバペ、アントワーヌ・グリーズマン、さらには少し謎だがエンゴロ・カンテまでも同サイドに多く流れている。相手の守備を揺さぶるという意味で、物足りなさを残していたのは明らかだった。
そして相変わらず守備は引き締まらない。非ボール保持時はグリーズマンがインサイドに落ちた5-3-2の形になるのが基本だったが、とくに攻撃から守備に切り替わった瞬間の中盤の立ち位置がバラバラ(グリーズマンが比較的自由に動いているのでとくにインサイドが空きやすい)。プレスバックも速くないので、ハーフスペースを突かれ深い位置への侵入をことごとく許している。中盤の要カンテが広範囲をケアするのか、WBが絞ってカバーするのか、CB一枚が前に出て食い止めるのか。何もかもが曖昧だった。
デシャン監督は前半途中から4-4-2へとフォーメーションを変更している。このことからも、いわゆる「急造3バック」が攻守において大失敗に終わっていたのは紛れもない事実だった。