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EURO2020 3年前

アーセナル自慢の逸材がイングランド代表で輝く。初スタメンで堂々プレー、何が凄かったのか?【ユーロ2020分析コラム】

シリーズ:分析コラム text by 小澤祐作 photo by Getty Images

初先発で輝いた19歳



 そんなイングランド代表だが、チェコ代表戦ではある男が輝きを放った。それが、19歳のブカヨ・サカである。

 アーセナルで台頭し嬉しいユーロ初出場を掴み取ったレフティーは、このチェコ代表戦が今大会初先発だった。サカは19歳290日でのスタメンとなったが、アーセナルのティーンエイジャーがイングランド代表として主要大会で先発に抜擢されたのは、ユーロ2012のアレックス・オックスレイド=チェンバレン(18歳301日)以来2人目の選手となったようだ。

 そのサカは12分の先制シーンでさっそく大仕事を果たした。自陣でボールを受けた背番号25はドリブルで相手を剥がし敵陣に侵入。一度味方にパスを預け、ボックス内でリターンを受けた。そこからクロスを上げグリーリッシュの元へボールが渡ると、今度はグリーリッシュからのクロスにサカが飛び込む。これはわずかに合わなかったが、その背後のスターリングがフリーでゴールを決めることができた。

 貴重な先制点の起点となったサカはその後も躍動した。敵を背負いながらもうまくボールを収め、素早く次のアクションに移行することで簡単には捕まらず、敵を確実に剥がす。そして非凡な加速力を駆使してどんどん前に進み、チーム全体のラインを押し上げ数的優位な状況を何度も作り出していた。対峙したヤン・ボジルは、ほとんどサカを止めることができていなかった。

 また、サカは流れの中でサイドに張るだけでなく、インサイドにポジショニングすることも多かった。これにより、チェコ代表側のマークに混乱を引き起こしている。先制点のシーンも、サカが一列下り、カルヴィン・フィリップスが一つ前に出ていたことで、チェコ代表の中盤は寄せが曖昧となっていた。

 後半はチーム全体の勢いが落ちサカが攻撃面で目立つ場面も少なくなったが、自陣ボックス内まで戻り守備に貢献するなど集中力は切れず。84分の交代時には会場から大きな拍手が沸き起こった。

 サカはその試合で最も輝いたスター・オブ・ザ・マッチに選出されている。データサイト『Who Scored』によるスタッツではドリブル成功数4回という数字が出ているが、これは両チーム合わせて断トツのものだった。また、チェコ代表を率いるヤロスラフ・シルハヴィー監督は「サカとスターリング止めるのはとても難しいことだった」とコメントを残している。それほど、アーセナルの逸材による突破力は凄まじいものがあった。

 選手層の厚いイングランド代表でサカの序列は決して高くない。しかし、初先発でこれだけの結果を残したならば、切り札としても十分に怖い存在であることは確かだろう。よりレベルの上がる決勝トーナメントでもぜひ見てみたい一人だ。

(文:小澤祐作)

【了】

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