若き日の川口能活と重なる姿
後半開始早々の53分、クリアボールをつないだユンカーは小泉佳穂にいったんボールを預け、一気に最前線へ。ここに絶妙のスルーパスが入った。その動きを予測していたGK谷は前に出ていたが、デンマーク人FWは彼をあざ笑うかのように右足ループをお見舞い。GKの頭を超えたシュートは美しい弧を描きつつ、無人のゴールに吸い込まれていった。
これでJ1・7点目。公式戦10戦10発という驚異のハイペースで得点を重ねるユンカーを凝視しながら、谷は「自分には何か違った選択肢はなかったのか」と考えたことだろう。もう一歩早く前に出ていたらシュートブロックできただろうか。ただ、このような瞬時の判断は難しい。こういった状況は世界の並み居る点取り屋と対峙する東京五輪の大舞台でも起こり得る。
そこで何をするかが守護神にとって重要だ。6月のU-24ガーナ代表戦・ジャマイカ代表戦で連続先発し、U-24日本代表正GKに最も近いと言われる男は、自身に突きつけられた命題の解決策を見出さなければならない。そうすることで、尊敬する川口コーチに近づけるのだ。
「自分は能活さんに似てますかね? どうなんだろう…」
数カ月前、若い頃の川口コーチに似ているとメディアから言われた本人は訝しがった。谷はU-17日本代表として2017年のU-17ワールドカップに参戦するなど、早いうちから頭角を現していた。シュートストップの鋭さと俊敏な反応を併せ持つイケメンなのだから、レジェンドに重なる部分は少なくない。そこに東京五輪メダルという勲章が加われば、偉大な先人を超えられるかもしれない。
それだけのポテンシャルを感じさせるビッグプレーを彼は見せつけた。1-2でビハインドを背負った65分、湘南は守備を崩され、大久保智明とユンカーに合計3本のシュートをゴール至近距離から放たれた。しかし、谷は体を張って全てを果敢にブロック。間一髪のところで危機を防いだのだ。
山田直輝は感情を高ぶらせて次のように言った。