ドイツ代表が執拗に狙った攻撃の形
1つは、ポルトガル代表が自軍の手薄なサイドに対策を講じず、「弱点」を放置しっぱなしだったことだ。基本的に[3-4-3]の布陣のドイツ代表は、高い位置を取るゴセンスとキミッヒの左右両ウイングバックを活かし、執拗なまでにサイドから攻撃を仕掛けた。この攻撃の意図について、レーブ監督は次のように振り返っている。
「我々は、特に両サイドから危険な攻撃を仕掛けたかった。ポルトガルの弱点が守備にあることは知っていた。彼ら(ゴセンスとキミッヒ)は両方ともフランス代表戦の時よりも意図的に高い位置でプレーしたので、我々は、しばしばポルトガルのディフェンスの背後を取って危険だったね。ビルドアップとゴールに向かうことにおいて、両選手はとてもよくプレーした。ロビン(・ゴセンス)はフィニッシュにおいてもね」
5分にゴセンスの“幻のゴール”を生んだ時点でそれは顕著に現れていた。ドイツ代表は、右サイドからはキミッヒだけでなく、右CBのマティアス・ギンター、ボランチのトニ・クロースがクロスを入れてポルトガルのゴールに迫った。
さらに、逆サイドに斜めに展開してから、ゴセンスかキミッヒが折り返してフィニッシュを狙った形が見事にハマり、3ゴールを奪う。4点目のゴセンスのゴールは、キミッヒからのクロスをシンプルにファーで頭で合わせたものだが、逆サイドを狙うという点では、先に奪った3ゴールと類似の形と見なせるだろう。
このドイツ代表のサイドアタックに対して、ポルトガル代表のフェルナンド・サントス監督は、試合中に何ら手立てを講じず、レーブ監督が言及した「弱点」は放置されたままだった。20分が過ぎた頃に、左SHのジョタが高い位置を取るキミッヒにつられてDFラインに入り、5バック気味になる場面もあったが、サントス監督が意図的に5バックを構築することはなかった。1点リードしてロナウドを最前線に残し、カウンター狙いだったにもかかわらず、ポルトガル代表が守備面で戦術的修正を加えなかったことは、ドイツ代表の逆転劇に繋がったと言える。