トーナメントだからこそ。皆が悲観的でない理由
「僕らのベストのパフォーマンスではなかったけど、決勝ラウンド進出に近づくポイントを取ったし、それ(決勝ラウンド進出)が現時点の僕らの究極の目標だ。身体のほこりを振り払って、上手くリカバリーして、数日後の最終戦を楽しみにしているよ」
ケインが「ベストのパフォーマンスではなかった」と振り返ったように、イングランド代表はスコットランド代表を相手に“ポテンシャル“を発揮することはできなかったが、ストーンズとタイロン・ミングスがCBでコンビを組む守備が崩壊したわけでもなかった。
サウスゲート監督が「これはトーナメントだ」と言うように、EUROのようなビッグトーナメントを勝ち上がっていくためには、目の前の試合で必ずしも美しく大量得点で勝つ必要はない。例えば、前回大会で優勝したポルトガルはグループリーグを3位で通過している。それも3戦連続ドローで1度も勝たないまま決勝ラウンドに進出しているのだ。
EUROが2016年のフランス大会から24ヶ国が本大会に参加するようになり、決勝ラウンドの試合が1試合増えたことで、チーム・パフォーマンスのピークをトーナメント以降にいかに持っていくかが、より重要になったのかもしれない。
そういった意味では、確かに「とてつもなく良い守備をした」スコットランド相手の0-0のドローという結果を悲観する必要はないだろう。勝ち点1を獲得したことで、チェコ代表との最終戦では引き分けでも決勝トーナメントに進出することができ、他会場の結果次第では負けたとしても次のラウンドに進出することができる。
もちろん攻撃面の連係で課題を残したが、ケインが言うように前線の選手たちが「上手くリカバリー」して運動量を取り戻せば、パフォーマンスは変わってくる可能性はある。引き分けでも決勝ラウンドに進出できることを踏まえれば、グリーリッシュ、ラッシュフォード、サンジェイドン・サンチョら控えの選手を先発させ、チェコ戦を割り切って「リカバリー」のために利用してもよいのかもしれない。その方が、攻撃面で思わぬ副産物を手に入れる可能性もある。
いずれにせよスコットランド代表とのドロー決着を、ポジティブに捉えすぎるのもよくないが、ことさらネガティブに捉える必要はないだろう。スリー・ライオンズは決勝ラウンド進出に向かって1歩前進した。EUROのようなビッグトーナメントでは、「勝つことができないときには負けないことが極めて重要」なのだ。
(文:本田千尋)
【了】