成果を出せなかったトップ下
大迫勇也の負傷で急遽招集されたオナイウが存在感を示した。クサビの収まりもよく、ゴール前で勝負できる。比較的、大迫と似たタイプであり、チャンスを生かして序列に食い込んできた。
オナイウの3点目はヘディングシュートだが、DFの背後でほとんどジャンプしていない。つまり小川のクロスボールがパーフェクトだった。DFを越えて、背後のオナイウにぴったり合わせている。小川の左足は今回の6月シリーズで威力をみせていて、この点では長友佑都や佐々木がいる左SBのライバルをリードしていた。
後半から入った橋本拳人はセルビア代表戦でブレーキになっていたが、この試合では球際の強さとダイナミックな動きを示した。やはりセルビア戦では1トップで持ち味を出し切れなかった古橋亨梧もドリブル突破、スルーパスと特徴を出した。
昌子源、中谷進之介はともに1対1での強さ、うまさを発揮。右SB山根は相変わらずの攻撃センスを見せつけ、山根に代わった室屋成も縦へのスピードで貢献した。
フル出場の浅野も落ち着いたシュートで得点、裏への抜け出しの速さやターンの速さでスペシャリティをみせた。坂元も得意の切り返しなどようやく持ち味を発揮できた。GK川島永嗣はさすがの安定感。
総じてよいプレーぶりだった中で、原口のトップ下起用は成果を出せていない印象だった。悪くはないが無難な域は出ず、鎌田、南野、U-24の久保建英、堂安律との競争力はこの試合では感じられなかった。
プレースタイルの浸透、選手層の厚さを確認できた6月シリーズだったが、セルビア以外は力の差がある相手であり、セルビアもほぼ2軍。今回は仕方ないとはいえ、マッチメークの改善はやはり強化のカギになる課題だろう。
(文:西部謙司)
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