横浜F・マリノスが直面するジレンマ
再び日本に目を向けたとすれば、Jリーグがいまや選手たちだけでなく監督にとってもステップアップの土台となるレベルの競争力に達したという事実は間違いなく喜ぶべきことだろう。ポステコグルー監督がセルティックで結果を残せばJリーグの地位も向上し、売出し中の外国人指導者が自らの評価を積み上げるための選択肢としてJリーグ行きを考慮する例もおそらく増えると予想される。
一方で、マリノスは当然ながらジレンマに直面することになる。彼らが失うのは、クラブに成功をもたらし、Jリーグのトップクラブのひとつという立場を取り戻させてくれただけでなく、特徴的で効果的で見応えあるプレースタイルを植え付けてチームの姿を再定義してくれた監督だ。シティ・フットボール・グループは、傘下の全クラブに共通する哲学の適用を望んでいる。この関与を考えれば、同様の方向性を持った後任を連れてくることが見込まれるとしても、シーズン途中に準備期間もないまま監督交代を実行に移すのは簡単なことではない。
すでに日本で活動しており、攻撃的サッカーを信条とする指導者を早急に招へいすることもひとつの可能性かもしれない。アルビレックス新潟のアルベルト・プッチや、ポステコグルー監督の元アシスタントであり最近モンテディオ山形を率い始めたピーター・クラモフスキー、元川崎フロンターレ監督の風間八宏氏といった名前がすぐに頭に浮かぶ。あるいはもう少し時間をかけ、広範なスカウティング網を活用して、日本では聞いたことがないような誰かを海外から連れてくるのだろうか。
いずれにしてもポステコグルー監督を失うことはマリノスとJリーグ全体にとって大きな痛手ではあるが、彼自身が自らの仕事についてよく使う表現を借りるとすれば、彼の旅路の次のステージがどのようなものになるのかは非常に楽しみだ。
(文:ショーン・キャロル)
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