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Jリーグ 3年前

本間至恩の欧州移籍の準備は?「ほぼ」。アルビレックス新潟指揮官が語る若き才能【インタビュー後編】

シリーズ:コラム text by 小澤一郎 photo by Getty Images

魔境J2で今シーズンスタートダッシュに成功したアルビレックス新潟。禁断の「脱J2魔境マニュアル」と題し我が国が誇る2部リーグ・J2を特集した、6月7日発売『フットボール批評issue32』から、成績、内容ともに今季のJ2を牽引する存在となっているアルビレックス新潟。その陣頭に立つアルベルト・プッチ・オルトネダ監督へのインタビュー記事を一部抜粋して前後編で公開する。今回は後編。(文:小澤一郎)

「フィジカル」の評価の基準とは?

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【写真:Getty Images】



――もう少し突っ込んで選手個人への指導をお聞きします。例えば、本間については日常レベルでどのようなアプローチをして、レベルアップを後押ししたのですか?

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 とてもシンプルです。私はこれまで25年以上、各年代の世界トップレベルの選手たちの指導経験を持っています。その経験から冷静に選手を分析し、何が武器で何が課題なのかを整理します。その上で、まずは武器をさらに強化する指導をし、続いて課題を克服する指導を入れていきます。

 昨年までのシオンは攻撃の1対1では圧倒的な力を見せていましたが、守備では課題だらけでした。プレッシャー、アグレッシブさなど、守備に必要な要素全てが欠けていました。

 それとポジショニングに改善の余地がありました。どこに立てば有利な状況でボールを受けることができ、得意の1対1を発揮できるのか。そのためにはボールを受ける前のポジショニングがとても重要です。そうした点を彼に伝え、彼もそれを受け入れるメンタリティがありましたので、彼がレベルアップするような個人向けトレーニングプログラムもグループでの練習の中に組み込みました。

 課題は一つずつクリアしていく必要がありますので、段階を踏んで彼はそれをクリアしていきました。それがシオンのここまでの歩みです。同時に今は他の若手選手にもそうしたアプローチで指導しています。

――そういう指導においてはビデオも活用しますか?

 もちろんです。選手が理解するためには言葉だけではなく、映像も必要ですので選手のプレー映像を用いてレクチャーします。

――本間は欧州移籍に向けてすでに準備できた状態だと言えますか?

 ほぼ。

――「ほぼ」ですか。では、何がまだ足りないのですか?

 全ての若手選手に必要な時間です。

――本間のフィジカル面での評価を教えて下さい。例えば、乾についてエイバルのメンディリバル監督や強化部に聞くと、フィジカル面を高く評価していて、日本にいた時とは180度評価が異なります。日本にいた時には「小さい、弱い」といったイメージでしたが、欧州での日本人のフィジカルの評価は意外に高い印象です。

 その通りです。ただ、それはフィジカルをどう理解するかにもよります。フィジカルを高さやパワーで定義してしまえば、日本人は「フィジカルがない」という評価になるでしょう。

 一方で、メッシは「岩よりも強い」というフィジカル的評価がバルセロナにはあります。その意味ではプレーの中でフィジカルを定義、評価していくべきで、特に前線のアタッカーは身長が低くともメッシやシオンのようなスピード、敏捷性があれば大きな武器になります。彼らが生きるようなプレーをするチームに入ればフィジカル的評価は当然高くなり、逆にプレーの80%でボールが空中を行き交っているようなチームでプレーすれば彼らのような選手は役に立ちません。

 エイバルはどちらかというとロングボールの多いスタイルのチームですが、攻撃局面のサイドでアタッカーのドリブル、個の突破は求められているので乾のような選手は評価されるでしょう。

 サッカーにおいて最も価値があるとされ、高いお金が支払われるのは、得点とドリブルです。それができる選手には高値がつきます。

(文:小澤一郎)

『フットボール批評issue32』

≪書籍概要≫
定価:1760円(本体1600円+税)

禁断の「脱J2魔境マニュアル」

我が国が誇る2部リーグ・J2は、「魔境」の2文字で片付けられて久しい。この「魔境」には2つの意味が込められていると考える。一つは「抜け出したいけど、抜け出せない」、もう一つは「抜け出したいけど、抜け出したくない気持ちも、ほんのちょっぴりある」。クラブの苦痛とサポーターの得体のしれない快楽が渾然一体となっているあやふやさこそ、J2を「魔境」の2文字で濁さざるをえない根源ではないだろうか。

1999年に創設されたJ2は今年で22年目を迎える。そろそろ、メスを入れることさえ許さなかった「魔境」を脱するためのマニュアル作りに着工してもよさそうな頃合いだろう。ポジショナルプレーとストーミングのどちらがJ2で有効か、そもそもJ2の勝ち方、J2の残留におけるメソッドはできないものなのか。このように考えている時点で、すでに我々も「魔境」に入り込んでいるのかもしれないが……。

詳細はこちらから

【了】

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