決定力に落胆も…ヴェルナーの動きは効いていた
ディフェンスで強さを見せたチェルシーは、ポゼッション率を高めたシティに対し基本はカウンターからチャンスをうかがった。その中で効果的な動きを見せたのがティモ・ヴェルナーである。
先述した通りシティは攻撃時、後ろがカイル・ウォーカー、ジョン・ストーンズ、ルベン・ディアスの3枚になっている。そのためヴェルナーはカウンター時、とくにインサイドに絞っているジンチェンコの裏、つまり中央に留まるのではなく3バックの脇を、持ち味であるスピードを活かし徹底的に狙っていた。
ジンチェンコの裏を最も早くカバーできるのはルベン・ディアスだが、同選手はスピードがあるタイプではなく、ヴェルナーは競争できる状況にされ置かれれば非凡なアクションを示すことができていた。場合によってはストーンズがカバーに入ることもあったが、いずれにしても3バックの一角を自身の下へつり出すという意味でヴェルナーのランニングは良い効果を発揮していたと言える。
上記した通り、ヴェルナーは基本的にはジンチェンコの裏を狙うのだが、ボールの位置によっては左に流れたり、あえて中央に留まり斜めへの走りを見せるなど、柔軟に動きを変えていた。
42分の場面ではヴェルナーが左に流れたことで中央のスペースが空き、ジンチェンコのプレスバックが遅れたことでハフェルツが空いた。そこにマウントからボールが入り、最後はGKエデルソンを交わしてゴールが生まれている。ハフェルツのタッチやマウントのパスも見事だったが、それを作り出したのは紛れもなくヴェルナーのランニングだった。
決定機を何度か外したため満点評価とはいかないが、オフ・ザ・ボールの質に関しては誰よりも高かったと感じている。彼が深さを作ったことでチェルシーは全体のラインが上がり、同時にシティの攻撃開始位置が下がった。繰り返しになるが、これで得点があったら、背番号11はMOM級の輝きと評価しても良かったかもしれない。