プレミアリーグ第38節、リバプール対クリスタル・パレスが現地時間23日に行われ、2-0でホームチームが勝利している。リバプールはこれで5連勝。一時は絶望的と言われたチャンピオンズリーグ(CL)出場権を無事に獲得することになった。これ以上ない厳しいシーズンだったが、風向きはどこで変わったのか。(文:小澤祐作)
完勝でなんと3位フィニッシュ
第37節バーンリー戦後、ユルゲン・クロップ監督は「ついに決勝まで来た」とコメントを残した。この「決勝」とは、ご存じの通りトーナメント戦のファイナルを指すものではない。プレミアリーグ最終節、クリスタル・パレス戦のことである。リバプールはここで勝てば、一時絶望的とも言われた来季チャンピオンズリーグ(CL)出場権の獲得をほぼ確実に掴むことができる状況にあった。
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迎えた「決勝戦」の舞台は本拠アンフィールド。しかも、制限こそあるがサポーターが戻ってきていた。勝利への道は、この時点でほぼ完成されていた。
立ち上がりは少しバタついたリバプールだったが、すぐに落ち着きを取り戻して試合をコントロール。無難にパスを回すだけでなく、積極的に勝負球を送り込みモハメド・サラーらの走力を活かすなど、C・パレスを押し込んだ。
リバプールが先制に成功したのは36分という良い時間帯。C・パレスを得意とするサディオ・マネがコーナーキックの流れからゴールネットを揺らした。
後半に入ってもペースはリバプールで、なかなか良い状態でボールを持てないウィルフリード・ザハやジョーダン・アイェウはフラストレーションを溜める。C・パレスの攻撃はまったく機能していなかった。その一方でリバプールは積極的なアタックを継続。そして74分、再びマネがゴールを奪いほぼ勝負を決めた。
C・パレスのシュート数は5本で、後半に関しては1本という内容。対してリバプールは19本ものシュートを浴びせていた。今季の1戦目はリバプールが7-0と大勝していたが、ここでも再び相性の良さを見せつけることになった。
これで5連勝となったリバプールは来季CL出場が確定。さらに同日に試合を行ったチェルシーとレスターが共に敗れたため、なんと一気に3位に浮上しシーズンを終えることができた。途中で暗いトンネルの中を彷徨ったが、結果的にはサポーターと共に笑顔でピッチを去ることになっている。
風向きを変えた若手CBの成長とブラジル人MFの存在
まだ最終節を終えたばかりだが、振り返るとリバプールの今季はこれ以上ないほど厳しかった。無敵と言われたアンフィールドでクラブ史上初の5連敗を喫し、8位転落も味わうなど、一時はCL出場権獲得が絶望的とも言われていた。シーズン途中にはクロップ監督でさえトップ4入りは「なさそうだね」と発言するほど、チームは深刻な状況に置かれていたのだ。
新型コロナウイルス感染拡大の影響でスケジュールが例年以上に厳しくなり、インテンシティの高いサッカーをベースとするリバプールでは怪我人が多発していた。とくに苦労したのは最終ラインの駒。早々に守備の要フィルジル・ファン・ダイクが長期離脱し、その相棒のジョー・ゴメスも11月に戦列離脱。結果的に、これがチームの歯車を狂わす原因となった。
DF陣が緊急事態に陥ったことで、本職中盤のファビーニョ、ジョーダン・ヘンダーソンを最終ラインで使わざるを得なくなった。しかし、それにより今度は中盤の強度が低下。失点は重なり、次第にカウンターも活きなくなり、点も取れなくなった。
冬にシャルケからオザン・カバク、プレストンからベン・デイビスとDFを補強するも、それだけですぐに問題は解決しない。2月の時点で、クロップ監督は優勝争いからの脱落を認めるしかなかった。
そんなチームに希望を与えたのが24歳ナサニエル・フィリップスだった。シュツットガルトへの期限付き移籍から復帰したばかりだった同選手は、年明け以降出番を増やすとピッチ上で奮闘。クロップ監督の信頼を掴み、新加入カバクとのCBコンビが定着するようになった。
彼らが最終ラインに収まったことで、ファビーニョは本職に戻る。すると面白いように、攻守の安定感が増した。ブラジル人MFがディフェンスラインの前にいることで、ジョルジニオ・ワイナルドゥムやチアゴ・アルカンタラのインサイドハーフもより持ち味を示すように。実際、ファビーニョをアンカーで起用したリーグ戦で、リバプールはわずか2回しか負けなかった。
N・フィリップスはもちろん、20歳リース・ウィリアムズも成長した一人だ。同選手はカバクが負傷離脱して起用できなくなったリーグ戦ラスト5試合すべてに先発。そして、5連勝に貢献している。今回のC・パレス戦でも、N・フィリップスとR・ウィリアムズのコンビはかなりの安定感を発揮していた。
若手がしっかりと成長して戦力に数えられるようになり、かつシーズン途中からの目標となったCL出場権を獲得。リバプールにとっては、これ以上ない結果になったと言えるだろう。来季再びファン・ダイクやジョー・ゴメスが主力を張ったとしても、今季のN・フィリップスやR・ウィリアムズの活躍が色褪せることはない。彼らの頑張りは、リバプールの運命を変えたのだから。
不調と言われたフロントスリーだが…
最後は“フロントスリー”にも触れておきたい。
サラーの活躍は大きく称賛されるべきだ。チームが不調に喘ぐ中でもコンスタントに点を取り続けるなど、怖さを示していた。結果的に得点王の座こそハリー・ケインに譲ることになったが、37試合出場で22得点は立派な成績。エジプトの快速自慢がいなければ、リバプールはもっと苦戦していた。
マネはこれまでの活躍と比較すると、今季は不振と言えるのかもしれない。実際、シーズン途中には批判の的となった。ただ、3月に入ってから調子を取り戻しており、最終的に二桁得点に到達。守備での貢献を考えても、やはり欠かせない存在だったと言えるはずだ。
そして、ロベルト・フィルミーノ。新加入ディオゴ・ジョッタの活躍もあり、恐らく今季、攻撃陣で最も起用を疑問視された選手だ。確かにパッとしないパフォーマンスに終始することもあり、シュート精度が上がらないことも多かった。総合的に評価すれば「不調」だったのだろう。ただ、マネ同様終盤にペースを上げ、5連勝に貢献。最終的な成績は36試合9得点7アシストとなったが、これは優勝した昨季とほぼ変わらない。かなり重要な試合で結果を残している点も、評価に値するはずだ。
と、ここまで3人について記したが、今季のフロントスリーに対しての評価は人によって大きく分かれるだろう。決して賛同は求めない。
ただ、ここで強く言っておきたいのは、この3人が大きな怪我することなく、リーグ戦35試合以上に出場したということだ。新型コロナによって例年以上にスケジュールが厳しくなった中、疲労により細かな怪我を繰り返す選手は少なくなかったが、この3人にはそれが一切なかった。そしてその中で、ある程度の結果を残せている。ここに関しては、見事という言葉以外見つからない。彼らの継続性は、リバプールの3位フィニッシュの要因になったと言っていい。
(文:小澤祐作)
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参照元:DAZN
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