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アトレティコが乗り越えた最後の試練。運命の最終決戦、7年ぶりの優勝をどのように実現したのか【分析コラム】

シリーズ:分析コラム text by 加藤健一 photo by Getty Images

ラ・リーガ最終節、バジャドリード対アトレティコ・マドリードが現地時間22日に行われ、1-2でアトレティコが勝利を収めた。アトレティコは7年ぶりにラ・リーガを制覇。そこに至るまでの道のりは困難の連続だったが、最終節も例外ではなかった。(文:加藤健一)

浮足立つ前半のアトレティコ

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【写真:Getty Images】

「乗り越えられない試練は与えない」なんてフレーズもあるが、アトレティコ・マドリードに与えられた試練は最後もギリギリだった。

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 迎えた最終決戦。ラ・リーガ優勝をかけた2つの決勝戦は別会場で行われる。レアル・マドリードはホームにビジャレアルを迎え、アトレティコはバジャドリードのホームに乗り込む。アトレティコが勝ち点2差で首位に立っているものの、直接対決ではレアルが1勝1分と勝ち越している。アトレティコが引き分け、レアルが勝てば、レアルの逆転優勝となるので、両者の差はほとんどなかった。

 アトレティコの試合の入りは硬かった。コケやサウール・ニゲスのらしくないパスミスが目立ち、それがチームに伝染するようにボールロストが続いた。ゴール前を固めるバジャドリードに対して中央突破でこじ開けようとしたが、分厚い網にかかってカウンターを食らうだけだった。

 そして、1つのチャンスが一瞬でピンチとなる。CKのボールがファーサイドに流れると、これを奪われカウンターを受ける。そのままゴール前までよどみなくボールを繋がれ、オスカル・プラーノにゴールネットを揺らされた。

 アトレティコは不意を突かれるように18分に失点を喫した。バジャドリードも19位で、残留するためには勝つしかなかった。

落ち着きを取り戻したアトレティコ

「ハーフタイムに、シメオネは落ち着けと言っていた」。マルコス・ジョレンテがそう言ったように、後半のアトレティコは幾分か冷静さを取り戻していた。

 後半キックオフと同時に激しいプレスをかけてボールを奪うと、キーラン・トリッピアー、アンヘル・コレアとダイレクトでつなぎ、縦に走りこんだジョレンテにスルーパスが通る。ペナルティエリアの右サイドに侵入したジョレンテの折り返しはDFに当たりながらルイス・スアレスの下へ。スアレスのヘディングシュートはDFにブロックされたが、後半開始から狙いが見える攻撃の形を作った。

 前半はアタッキングサードでの動きが乏しく、クロスに入っていくのがスアレスしかいないシーンも何度かあった。しかし、このシーンではコレアだけじゃなく、逆サイドのヤニス・カラスコもゴール前に顔を出した。これによりマイナスのコースが空き、スアレスがフリーの状況が生まれている。

 後半の初めにいい形を作ったアトレティコは、試合の流れを掴んでいく。そして、同点ゴールは57分に生まれる。相手11人をエリアの1/4に押し込んだ状態で、アトレティコは左右に揺さぶる。ペナルティエリア外中央でパスを受けたコレアは、華麗なドリブルテクニックで2人をかわし、正面のDFの股を抜くシュートでゴールネットを揺らした。

 ゴールだけみれば、完全にコレアのスーパーゴール。テクニシャンが神懸ると、誰であっても止めるのは難しい。しかし、アトレティコが両サイドを使いながら攻めていたその前の12分間を文脈として捉えると、コレアの選択は逆を突いたもののようにも見える。いくつかの要素が重なって生まれたゴールだった。

スアレスとアトレティコの産みの苦しみ

 精神的にも、57分に追いつけたのはアトレティコにとってよかった。その後はボールを持たれる時間が増えたが、アトレティコにとってそれはあまり不都合ではなかった。バジャドリードは勝つために前に出てきたが、それによって生まれるスペースもある。アトレティコは虎視眈々と狙っていた。

 そんな中でありえないミスが起きた。セルジ・グアルディオラのバックパスが、こともあろうかスアレスの下に渡ってしまう。スアレスはゴール前まで1人で運び、左足でゴールネットを揺らす。思いがけない形でアトレティコは逆転に成功した。

「私たちは融合した。非常に厳しいシーズンで、非常に厳しいゲームだった。私たちはできるだけ良い方法で勝とうとしていた。肉体的にはもうグラグラだったけどね」

 ジョレンテが語るように、選手たちの疲労もマックスだったに違いない。しかし、最後まで走り続けた結果として、ゴールがプレゼントされた。バジャドリードにとっては痛恨のミスだが、アトレティコにとってはご褒美のゴールとなった。

 スアレスはこう語る。「彼らが見下し、アトレティコが私のためにドアを開けてくれたように、人が生きるための状況は難しい。私の妻、そして子どもたち、多くの人々が私と苦しんだんだ」

 バルセロナから三行半を突き付けられたスアレスに、アトレティコが救いの手を差し伸べた。そして、この日、そのスアレスが優勝を決定づけるゴールを決めている。スアレスとアトレティコが感じていたのは、産みの苦しみだった。苦しんだ先には、必ず光が待ち受けている。

(文:加藤健一)

●スアレスの一撃! 優勝を決めるゴールがこれだ!

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【了】

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