プレミアリーグ第36節、マンチェスター・ユナイテッド対リバプールが現地時間13日に行われ、2-4でリバプールが勝利した。来季のUEFAチャンピオンズリーグ出場権獲得に向け負けられない試合が続くリバプールは、どのようにしてユナイテッドを撃破したのだろうか。(文:本田千尋)
暴動により延期されたマンU対リバプール
地獄の門が開いた。現地時間5月13日に行われたプレミアリーグ第34節。欧州スーパーリーグに抗議するファンの暴動によって延期されていた試合で、マンチェスター・ユナイテッドを相手にリバプールは4-2のスコアで勝利を収めた。
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これでリーグ戦の順位は勝ち点60の5位となり、4位のチェルシーとは4ポイント差。今季はあと3試合残っており、チェルシーの動向次第のところもあるが、来季のUEFAチャンピオンズリーグ出場権獲得の可能性を残した。オールド・トラフォードでもぎ取った貴重な勝利を、先発したナサニエル・フィリップスは「僕らにとって大きな夜」と表現している。
4-2という大味な勝利の引き金となったのは、良くも悪くも、この24歳のCBのアクションだった。フィリップスが「僕らはかなりゆっくりスタートしたと思う」と振り返った序盤が過ぎる頃、リバプールはユナイテッドに先制を許す。右のアーロン・ワン=ビサカのマイナスの折り返しを、ブルーノ・フェルナンデスが右足アウトでシュート。ボールはフィリップスの足に当たってゴールに入った。
公式記録はフィリップスの自殺点にはならなかったが、フィルジル・ファン・ダイクやジョー・ゴメスといった怪我人だらけの守備陣の穴を必死に埋めてきたCBとして、少なからず“責任”を感じたところもあったのではないか。もちろんフィリップス自身は、この失点の後でも「僕はあまり心配していなかった」とコメントを残している。
フィリップスの自信と責任
「他の選手たちも心配していなかったと思う。なぜなら僕らは本来のレベルでパフォーマンスをしていなかったからね」
フィリップスによれば、どちらかと言うと、リバプールにはまだ「余分なギア」があった。自分たちがやるべきことをできていなかったことが原因だという。しかし、フェルナンデスに決められた一撃によって、チーム全体はおろか、フィリップス自身が「余分なギア」を入れざるを得なくなったところはあるだろう。簡単に言えば、お尻に火が付いた、ということだ。
それから、ポール・ポグバやフレッジが最終ラインに入る5バックと、ハイプレスを使い分けるユナイテッドに苦しんだリバプールだったが、34分に同点に追い付く。CKからの混戦の中、ゴール前でフィリップスがボールをキープ、一旦ドリブルで右に離れて、振り向きざまにシュート。ディオゴ・ジョタがヒールでコースを変えて、ボールはゴールに吸い込まれた。ユルゲン・クロップ監督は渾身のガッツポーズである。
このフィリップスの、まるでFWのようなアクションの根底に、敵の先制点に関与したが故の“責任”があったと見るのは、拡大解釈だろうか。たしかに「あまり心配はしてなかった」としても、そこにはフィルジル・ファン・ダイクやジョー・ゴメスの穴を埋めて戦ってきた者としての「自信」だけでなく、1人のフットボーラーとしての“責任”が感じられるのだ。
「余分なギア」でゴールラッシュ
こうなって来ると、勢い付くのはリバプールの方である。ユナイテッドからすると、シティの優勝が決まった今、目の前の試合は今季の残りの試合の1つに過ぎない。余計な過密日程を押し付けられた格好のオーレ・グンナー・スールシャール監督からすれば、UEFAヨーロッパリーグの決勝に向けて無理をして、怪我人を出したくないというのが本音だろう。試合中のノルウェー人指揮官は、どこか冷ややかな様子でピッチに目を遣っていた。
一方、リバプールの選手たちにとっては、来季のCL出場権獲得のために勝たなくてはならない試合。フィリップスがまるでFWのようなアクションを見せたゴールによって、どちらが勇気づけられるかは明らかだった。前半の終了間際にはFKからロベルト・フィルミーノが頭で決めて勝ち越し。そして後半に入ると、リバプールは「余分なギア」が入りっぱなしになる。
47分、敵のGKからのビルドアップに対し、ハイプレスからショートカウンター。さらにカウンタープレスが機能して、フィルミーノが3点目。フィリップスの言う自分たちがやるべきことが行って、つまり、本来のリバプールらしい攻撃を敢行した。68分、プレスが上手くハマらず繋がれ、マーカス・ラッシュフォードにテクニカルなシュートを決められ、一時は1点差に詰め寄られたが、90分にスーパー・カウンターが炸裂。独走したモハメド・サラーが4点目を奪って、試合を決定付けた。
こうして、良くも悪くもフィリップスが火を付けたことで、らしいスタイルを発揮したリバプールは、4-2で“赤い悪魔”に勝利。目の前の地獄の門が開いた。もちろんそれは、地獄に至る門ではなく、地獄から抜け出す門である。フィルジル・ファン・ダイクやジョー・ゴメスを始めとする怪我人が絶えず、苦しいシーズンを送ってきたリバプールにとって、ようやく生き地獄を抜け出した後の光が見えてきた。
地獄の淵に立つリバプール
先立って13日に行われた試合でチェルシーがアーセナルに敗れたことで、チェルシーの勝ち点は64のまま。リバプールはユナイテッドに勝ったことで勝ち点60の5位となり、来季のCL出場権獲得となる4位以内でリーグ戦を終える可能性を残した。もちろんチェルシーの動向次第のところはある。リバプールは残り全勝が必須となるだろう。クロップ監督は次のようなコメントを残した。
「チャンピオンズリーグをゲットする唯一の道は、全ての試合に勝つことだ」
チェルシーは15日にレスターとFAカップの決勝をこなした後で、18日にリーグ戦でレスターと再戦。29日のCL決勝を前に、23日にアストン・ヴィラ戦を迎えるという、なかなかハードな日程だ。レスターとアストン・ヴィラ相手の取りこぼしは十分に考えられる。
残りの3試合で、リバプールはCLの舞台に生還することができるだろうか。現時点では、リバプールの選手たちは、まだ地獄の淵に立っている。
(文:本田千尋)
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参照元:DAZN
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