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バルセロナは攻撃が沈黙。なぜアトレティコからゴールを奪えなかったのか? 天王山で露わになった弱さ【分析コラム】

シリーズ:分析コラム text by 加藤健一 photo by Getty Images

ラ・リーガ第35節、バルセロナ対アトレティコ・マドリードが現地時間8日に行われ、0-0の引き分けに終わった。バルセロナは後半にいくつかチャンスを作ったものの、アトレティコからゴールを奪うことができなかった。好調だったリオネル・メッシとアントワーヌ・グリーズマンの2トップを軸とするバルセロナは、なぜ沈黙したのだろうか。(文:加藤健一)

バルセロナは首位アトレティコを倒せず

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【写真:Getty Images】

 熾烈な優勝争いが繰り広げられる今季のラ・リーガで、この第35節は天王山である。首位を守り抜いてきたアトレティコ・マドリードは、じわじわと勝ち点差を詰めるバルセロナのホームに乗り込む。そして、翌日にはレアル・マドリード対セビージャも予定されている。

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 アトレティコはこの試合に敗れれば、バルセロナに首位を明け渡すことになる。引き分けても、レアルがセビージャに勝利すれば、直接対決で1勝1分のレアルが首位に浮上する。「勝たなければいけない」度合はバルセロナが上だが、アトレティコも引き分けで満足できる試合ではなかった。

 結果は0-0で、勝ち点1ずつを持ち帰った。しかし、どちらも勝ち点3を狙った結果の無得点。両チームともに攻撃の決定打を欠いていた。

 アトレティコはトマ・レマルがハムストリングを痛め、13分に交代するアクシデントに見舞われた。バルセロナもセルヒオ・ブスケッツがステファン・サビッチと交錯。一旦ピッチに戻ったものの、ほどなくして交代となった。18歳のイライシュ・モリバを入れてフレンキー・デ・ヨングをアンカーに置いたバルセロナは、ゲームプランの再構築を強いられた。

 シュート本数は前半が3対9でアトレティコが上回り、後半は9対2とバルセロナが大差をつけていた。前半はバルセロナがボールを持つ時間が長く、後半はほとんど五分。アトレティコはボール保持からの攻撃に活路を見いだせず、ボールを持たせていた前半の方がチャンスを作れていた。バルセロナもブスケッツが下がる32分まではシュートが1本しかなかったが、後半の方がいい形を作れていた。

「偽9番」とグリーズマン

 深さを取れる選手がいなければ、「偽9番」は機能しない。ペップ・グアルディオラやティト・ビラノバが率いていた頃、メッシを中央で起用する際は、ウイングにストライカーを置いている。ダビド・ビジャやティエリ・アンリがDFラインの裏を取っていた。

 ウイングがサイドバックをくぎ付けにすることで、センターバックとMFの間にはスペースが生まれる。センターバックが前に出れば、ウイングが斜めに切り込んで裏に抜け、センターバックが留まればメッシがスペースでボールを受けて前を向く。メカニズムとしてはシンプルで、要諦さえ押さえれば相手に苦しい二者択一を強いることができた。

 現在のバルセロナは3-5-2で、メッシとグリーズマンが最前線にいる。メッシが降りてくる代わりに、グリーズマンは最前線に留まる。理論上は3トップ時代の偽9番と同じで、グリーズマンが深さを取る役割を任されている。

 グリーズマンはこの形で結果を残している。直近は4試合で4得点。アトレティコ時代の2トップとは役割が全く違うが、その仕事に徐々に適応していた。

 バルセロナはライン間でペドリやリオネル・メッシがボールを受けて前を向くのが攻撃のスイッチになるが、アトレティコはそれを塞いでいた。5-4-1で守るアトレティコの最終ラインと中盤の2ラインは非常にコンパクトだった。メッシはアンカーの横まで降りてきてボールを引き取るシーンが多かった。

バルセロナが施した修正も実らず…

 バルセロナが良くなかったのは、グリーズマンを最前線に留めておけなかったことだ。ボールに触れる機会がなかなかもらえないグリーズマンは、メッシと同じように下がるシーンが増える。

 バルセロナはデ・ヨングの飛び出しという道具も持っているが、ブスケッツの負傷によって失ってしまった。右サイドのセルジーニョ・デストはDFラインの裏を取る動きに乏しい。ジョルディ・アルバはその動きを見せていたが、キーラン・トリッピアーがうまく対応していた。深さを取れる選手がいなければ、DFラインは高く保たれ、ライン間のスペースも使えない。

 グラナダ戦で退場処分を受けたロナルド・クーマン監督は、この試合もスタンドから観戦していた。上から見ていれば、この状況がよくわかったはずだ。バルセロナは75分にデストとペドリを下げ、ウスマン・デンベレとセルジ・ロベルトを投入している。セルジ・ロベルトが右サイドに入る3-4-2-1への変更かと思われたが、デンベレを右ウイングバック、セルジ・ロベルトを右インサイドハーフに入れている。

 デンベレをヤニス・カラスコとマッチアップさせて裏のスペースを突く。ボールロストが増えるのは織り込み済みで、バランサーとしてセルジ・ロベルトがデンベレの脇でカバーしていた。一定の効果はあったので、もう少し長い時間できていれば、スコアは動いたかもしれない。

 異次元ともいえるメッシのドリブルによって、バルセロナの攻撃はある程度の体を成していた。しかし、チームとしての連動性は乏しい。「深さ」を取る動きの少なさは、攻撃陣が沈黙した原因の解釈の1つ。バルセロナは天王山で弱さを見せてしまった。

(文:加藤健一)

【了】

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