UEFAヨーロッパリーグ(EL)準決勝1stレグ、ビジャレアル対アーセナルが現地時間29日に行われ、2-1でビジャレアルが勝利した。アーセナルは2点を先行され、57分にはダニ・セバージョスが退場処分を受けた。10人で2点を追う苦しい展開となったが、PKで貴重なアウェイゴールを奪い、2ndレグへ望みをつなげている。(文:加藤健一)
準決勝1stレグは荒れた展開に
大荒れの試合ではなかったが、カードが飛び交った。ホームのビジャレアルは3枚、アーセナルは4枚のイエローカードを受け、退場者を1人ずつ出している。1つひとつの判定の真偽はさておき、選手たちは主審に不信感を抱きながらプレーしていたように映った。
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2点を許したアーセナルは、57分にダニ・セバージョスがこの試合2枚目のイエローカードを受ける。味方のパスがずれたところに出した足が、ダニエル・パレホの足を踏んでしまった。セバージョスからしてみれば不可抗力の要素もあっただけに不運な判定だった。
アーセナルは10人となったが、ドリブルでペナルティエリアに侵入したブカヨ・サカが倒されてPKを獲得する。マヌ・トリゲロスの出した足にかかったが、グレーゾーンな判定だった。ジャッジは覆らず、ニコラ・ペペがPKを成功させて1点を返した。
77分には縦パスを受けたサカに対し、エティエンヌ・カプエが後ろから削ってしまう。カブエにも2枚目のイエローカードが提示された。10人対10人となった試合はスコアが動かず、2-1でビジャレアルが勝利。敗れたアーセナルもアウェイゴールを奪ったことで、2ndレグに決勝進出の望みをつないだ。
問題を引き起こしたペペの守備
ビジャレアルはアーセナルのハイプレスを攻略していた。ウナイ・エメリ監督はアーセナルの守備に問題を引き起こしている。
この日のアーセナルは4-3-3で、ペペとサカをウイングに配置し、最前線にはエミール・スミス=ロウを置いた。中盤はトーマス・パルティを底に置き、インサイドハーフにダニ・セバージョスとマルティン・ウーデゴールを起用している。
ビジャレアルの4バックに対し、アーセナルは3トップがマッチアップした。両ウイングはサイドバックへのパスコースを切りながら、センターバックへアプローチする形だ。
ビジャレアルはGKからボランチのダニエル・パレホに縦パスを送る。パレホはワンタッチで右サイドに展開すると、ボールを受けた右サイドバックのファン・フォイスの前に広いスペースが生まれた。ペペは右センターバックとフォイスの中間にポジションをとっていたので、フォイスへの横パスをカバーすることができなかった。
フォイスは長い距離を運んで、開いたサムエル・チュクウェゼにパスを送る。チュクウェゼがドリブルでペナルティエリアに侵入すると、マヌ・トリゲロスのシュートがゴールネットを揺らした。
アーセナルの想定外
2点目を奪われた直後のシーンでも、アーセナルは左サイドを狙われている。これもビジャレアルのビルドアップからで、フォイスがドリブルで長い距離を運んだ。このシーンでもペペは中途半端な位置をうろうろしており、フリーになったフォイスにはセバージョスが遅れてスライドすることで対応している。
ビジャレアルはこの形を何度も狙っていたが、逆サイドではそういったチャンスはあまり生まれていない。右ウイングのサカは対面するアルフォンソ・ペドラサと近い距離を取っていたので、そこを狙われることがなかった。チームとしての弱点というよりかは、ペペの癖を突かれたような恰好だった。
アーセナルにすれば、想定外だった部分もある。左サイドバックのペドラサは攻撃的なスタイルで、推進力のあるドリブルが魅力だ。対照的に右サイドのフォイスは、センターバックが本職。配球力やスピードはあるものの、あまりドリブルのイメージはない。だからこそこの試合ではフォイスのドリブルが利いていた。足を痛めて70分に交代したが、それだけ長い距離を走ったということでもある。
セバージョスが1度目の警告を受けたのも、フォイスへのファウルだった。これはビルドアップからではないが、フォイスの前ががら空きになっていたのは同じだ。「我々は危険なポジションに入る方法を知っていた」とウナイ・エメリ監督は試合を振り返っている。古巣の弱点は知り尽くしていた。
「3-0にできた」ビジャレアル
ペペのポジションが修正された後半は改善されていただけに、アーセナルとしてはもったいなかった。ミケル・アルテタ監督は「異なる2つのハーフだった」と前後半で流れが変わったと言い、サカも「後半はポジティブな部分がたくさんあった」と後半の戦いに手ごたえを感じている。
アーセナルが前半に反省点を抱えているのと同じように、ビジャレアルにとっては後半が問題だった。アーセナル視点で見れば、2失点で抑えられたのはラッキーである。ベルント・レノのファインセーブも光ったが、ビジャレアルの拙攻に助けられた形だった。
2点リードして1人多い状況になったが、追加点を決められずに失点を喫している。腕章を巻いたラウール・アルビオルは「3-0にできたことを忘れてはいけない」と言っていたが、セーフティーに2点差を守り抜くのか、3点目を狙うのか、いまいちはっきりしない試合運びだった。
1stレグで出た反省点を、2ndレグではどのように修正するか。1点差で勝利したビジャレアルにも、アウェイゴールを奪ったアーセナルにも、決勝進出のチャンスは残されている。
(文:加藤健一)
【了】