チャンピオンズリーグ(CL)準決勝1stレグ、レアル・マドリード対チェルシーが現地時間27日に行われ、1-1のドローに終わっている。立ち上がりからチェルシーに押し込まれたマドリーは、14分に失点。その後も何度か決定機を作られた。しかし、最終的にはドロー決着。そこにあったわずかな差とは?(文:小澤祐作)
チェルシーの勢いに飲み込まれた前半
レアル・マドリードを率いるジネディーヌ・ジダン監督は試合後に「良くなかったのは確かだ」と話した。ただそれは、90分間全体についてではない。前半45分間についてである。
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3-5-2でこの試合に挑んだマドリーは、立ち上がりからチェルシーの勢いに飲み込まれ、自分たちの形を見失っていた。相手の鋭いプレスを前に落ち着きはなく、ボールを奪っても一瞬にして奪い返される。トニ・クロースが組み立てのために最終ラインに落ち、左ウイングバックのマルセロがハーフスペースを狙うなど攻撃時の工夫もみせていたが、堅守チェルシーには通用しなかった。
ただ、攻撃よりも問題だったのは守備だ。攻撃時3-4-2-1になるチェルシーに対しマドリーは基本5-4-1のような形で守ったが、チェルシー側の選手を捕まえることがまったくできず、随所でフリーとなる状況を与えてしまっていた。
とくに目立ったのが、ハーフスペースを狙うチェルシー側のインサイドハーフとシャドーをフリーとしてしまうこと。一度大外のエリアを使われて守備陣が広げられ、そこから中に折り返され、直前に広げられていたスペースを使用されるというケースが非常に多かった。エンゴロ・カンテやメイソン・マウントの存在感が光っていたのは、そういったことが要因だ。
上記した通りハーフスペースに位置する相手のインサイドハーフ、そしてシャドーの2枚を誰がチェックするのか曖昧となったマドリーは、チェルシーに深い位置への侵入を許し14分に失点。その後も何度か決定機を作られている。結果的に1失点で済んだが、早い時間からチェルシーにより余裕を与えてしまっても決して不思議ではない展開だった。
エースの一撃でリズムに変化
しかし、サッカーとは一つの出来事で流れが大きく変わる。この日のマドリーがまさにそれを証明した。
29分、マドリーはコーナーキックからカリム・ベンゼマがゴールネットを揺らしている。GKエドゥアール・メンディが反応できない、芸術的なボレーシュートだった。
この1点は予想以上に大きかった。ここからマドリーが劇的に良くなったわけではなかったが、立ち上がりにはなかった落ち着きを取り戻している。チェルシーの選手をしっかりと捕まえられるようになり、簡単にスペースを与えることもなくなっていた。
後半も冷静さを保ち、相手がリスクを冒さなくなった点もあったが、チェルシーに長い時間ペースを与えることはなかった。追加点こそ奪えなかったが、ドタバタした立ち上がりからしっかりと修正してドローに持ち込んだのは、マドリーにとってポジティブな要素だったと言えるかもしれない。
ドローを生んだわずかな差
しかし、全体的に見れば勝利に相応しかったのはチェルシーだ。とくに立ち上がりの勢いは凄まじく、上記した通り早い時間で勝負を決めても何ら不思議なことではなかった。
それでもドローという結果に終わったのは、ほんのわずかな差と言えるだろう。
チェルシーのFWティモ・ヴェルナーは10分に訪れた超ビッグチャンスを外した。その後もカウンターから何度かフリーとなる場面があったが、出し手との呼吸が合わずチャンスを無駄にすることが多く、トーマス・トゥヘル監督を落胆させている。スピードを活かした背後へのランニングが効果的でなかったわけではないが、最も求められるゴールという部分でまったく貢献できなかったのは痛い。
対するマドリーのベンゼマは、少ないチャンスを確実にモノにした。29分の場面、まったく簡単なシュートではなかったが、それでも仕留め切るあたりにエースストライカーとしての凄みを感じることができた。
チャンスをふいにしたヴェルナーと、少ないチャンスをモノにしたベンゼマ。この両FWの差が、今回のドローという結果を生んだと言っても過言ではない。また別の言い方をすると、マドリーは立ち上がりの決定機を活かしきれなかったチェルシーに救われた格好でもあった。ベンゼマの1点がなければ、どうなっていたかわからない。
(文:小澤祐作)
【了】