プレミアリーグ第32節、リーズ・ユナイテッド対リバプールが現地時間19日に行われ、1-1の引き分けに終わった。リバプールは先制したが、後半は防戦一方の展開となり、87分に追いつかれた。試合終盤の同点弾は、起こるべくして起きたものだった。(文:加藤健一)
リーズのマンツーマンを攻略
「前半は本当によいプレーを見せていた」とユルゲン・クロップ監督が振り返るように、最初の45分の主導権を握ったのはリバプールだった。ボール保持率こそさほど変わらなかったが、リーズ陣内で多くの時間を過ごしていた。
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球際の激しさと前への推進力はリーズの特徴だが、リバプールも負けていなかった。腕章を巻くジェイムズ・ミルナーに先導される形で、リバプールも自身のアイデンティティを見せている。
31分の先制点もダイレクトな攻撃が決まった形だ。中盤に降りてきたディオゴ・ジョタが右サイドに大きく展開する。トレント・アレクサンダー=アーノルドがDFラインの裏を取ってワンタッチで折り返すと、ゴール前に走りこんできたサディオ・マネがゴールに流し込んだ。
リーズの守備はマンマークが原則である。最終ラインに1人だけ余らせ、残りのフィールドプレイヤー9人は、マッチアップする選手を離さない。4-3-3のリバプールであれば、同じ4-3-3の並びでスタートすれば布陣はかみ合う。
相手のサイドバックが高い位置を取ればウイングが下がって対応し、相手のMFがボールを引き出すために落ちれば、対面するリーズのMFもそれについていく。ポジションチェンジすることはあるが、原則としてはマンツーマンだった。
後半のリバプールが苦しんだ理由
リバプールはそれを逆手に取った。象徴的だったのは7分のシーン。右サイドからバックパスを引き取ったファビーニョは、寄せてくるパトリック・バンフォードを剥がしてボールを運ぶ。そしてそのままドリブルでペナルティーエリアまで侵入し、ラストパスを送っている。
先制点のシーンも、ジョルジニオ・ワイナルドゥムからバックパスを受けたオザン・カバクが、ボールを運びながらジョタにパスを送っている。センターバックが積極的に運ぶプレーは、リバプールの狙いだったのかもしれない。
リーズは受け持つ選手を捨ててボールホルダーにアプローチする判断が一瞬遅れた。結果としてファビーニョはペナルティーエリアまで侵入することができたし、カバクもボールを運ぶことができた。リーズのディフェンスは1つ剥がされると、対応が後手に回るという弱点を抱えていた。
しかし、リーズも後半は修正していた。マンツーマンが基本なのは変わらなかったが、センターバックをフリーにさせなかった。近くにいる選手が自身の担当を捨ててボールホルダーに寄せ、近くにいる味方が1つずつずれていく。マークをローテーションさせることで、数的同数ではめることができた。
その結果として後半はリーズが主導権を握る。リーズはCKの機会が増え、ゴールに迫った。リバプールのGKアリソンは何度もチームを救うセーブを見せたが、87分の同点ゴールはノーチャンスだった。ゾーンで守るリバプールはディオゴ・ジョレンテをフリーにしてしまった。
リバプールに足りないのは…
リバプールの攻撃と守備は表裏一体だ。その点で見ると後半はリーズに押し込まれたのだが、センターバックが運べなかったことが大きい。ボールを回収しても繋げないので、GKにボールを下げる。しかし、近くにいるリバプールの選手は数的同数で見張られているので、アリソンも後半は長いボールを蹴ることが多かった。
元来はフィルジル・ファン・ダイクとジョー・ゴメスがボールを運ぶ役割を担っていた。しかし、2人が塞がれたときはアンカーのファビーニョがボールを受けてサイドに散らしていた。ファビーニョは寄せられても逆サイドのサイドバックに届ける能力があった。
この日のアンカーはワイナルドゥムだった。キープ力があり、モビリティも高く、対人守備にも強い。しかし、ロングレンジのパスはあまり得意ではなく、この日はあまりボールに触ることができなかった。チアゴは局面を変える長いパスを出せるが、アンカーで起用するには守備範囲に不安がある。ジョーダン・ヘンダーソンの復帰はまだ先。リーズはセンターバックではなく、MFにボールが入ったところを狙っていた。
ファビーニョはそれをすべて解決できるが、センターバックで起用せざるを得ない。ファビーニョが加わる前、リバプールは大事な場面で失点を繰り返して勝ち点をこぼしていた。そのころを思い出させるような試合だった。
もちろん、不調に陥った原因の深淵はフィルジル・ファン・ダイクをはじめとするセンターバック陣の離脱にある。しかし、リバプールが試合をコントロールできなくなったのは、ファビーニョがアンカーにいないからなのではないだろうか。
(文:加藤健一)
●マネのゴールで先制も… リーズ対リバプール ハイライト
【了】